妖しげ儚げ裏世界 (ページ25)

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裏世界の裏事情―廿貮― ページ25

……ふー……これでこのまま座っていればやっと京都か……

あの後、家を出て急いで新幹線に乗り

今は〝列車〟なるものに乗っている

まぁ、距離は短いんだけど

既に窓から覗く景色は夕日が出ていた

二時間半座りっぱなしだったからか身体が固くなっている

(つくまで、ちょっと眠っとこうかな……)

疲れたからなのか、そう考え、窓に寄りかかるようにして眠ろうとした時……

「よーお兄さん。前いいか？」

誰か知らない男が話しかけてきた

スーツ着崩してて怪しさ満開……なんだけど顔はいいから女子目線だとさらにイケメンに見えるんだろうな……

なんて考えてる間に男は勝手に向かい合っている席に座った

……俺、返事してないのに……

「なぁお兄さん。アンタも京都行くのか？」

『この列車は京都行きだろ？』

「はは、確かにそうだな」

男は持っていた缶ビールのプルタブを開け、そのまま一気飲みする

……怪しいんだけど、不思議な奴……

そう思いながら男に視線を向ける

「……なんだ、これ欲しいのか？」

男は俺の視線に気づいたのか、何故か飲みかけのビールを進めてきた

『いるわけないだろ。飲みかけじゃないか』

「それがなんと、此処にもう一本あんだよ」

酒が入ってるせいなのか上機嫌で笑ってる

「ほら、呑めよ。欲しいんだろ？」

『いらねぇってば。こんな時間帯に飲めるか』

「ふ～ん……そ」

男は一口ビールを含む

「そういやアンタの名前、なんてんだ？」

男は窓の外を見つめながら俺に問う

『……榮倉櫂。それで、お前は？』

「俺か？俺は犬神晋助」

いぬがみ……和風だ

「俺も聞いていいか。榮倉は祭り、興味ある？」

『祭り……？』

そういえば毎年、墓参りに行く度にやってる気がする

「そ、祭り。毎年この時期にやってんだ」

『そうか……あんまり興味ないけど……』

「行ってみるといい。俺なんて東京から来てるからな……」

『そうなのか？』

驚いた

まさか同じ県に住んでいたとは

「暮らしはな？地元は京都だ」

『あ、なるほど』

それならわざわざ行くのも納得

「……祭りは俺たちにとって大切なモンだしな……」

『え？』

聞き取れなかった

『今、なんて……』

「おっと、ついたぞ。じゃ俺行くから」

〝またな〟

そう言って彼は列車から降りていった

『……祭り……か』

「……あいつが琥珀が言ってた奴かなぁ」