妖しげ儚げ裏世界 (ページ20)

今日:6 hit、昨日:5 hit、合計:3,006 hit

裏世界の裏事情―拾漆― ページ20

「……で？一体何のようなんだ。国府田」

「ふー……やっと落ち着いてくれたね……

いやー実は皆と呑みに行こーかなー……って誘いに来たんだけどさ

なんか皆、どっか行くみたいだね。京都だっけ？」

……国府田さん、地獄耳だな……

「そうなんですよ！獅子王さんと先輩が行くみたいで」

「私は行きませんけどね」

奉日本が言った言葉に反論するように五百扇先輩が呟く

「ふーん……そうなんだ……」

『国府田さんは何処か、行くんですか？』

何気に気になり、呟き加減で聞いてみる

「そうだね……一応、休みは取ってるけど……
あんまり考えてはいないかな」

様になる困り顔で微笑む

マイペースな国府田さんらしい答えだ

「おーい解散だ、お前ら。明日から休みだからな。仕事はこの変でいいだろ。帰るぞー」

獅子王さんが机を片付けながら声を張る

「あれ、帰るの？せっかく来たのに……」

「お前が来ると仕事にならないからな
それにこの時間帯には全員帰らそうと思ってたから……」

「あ！それじゃ先輩！一緒に帰りましょうよ
どうせ途中まで道は一緒ですから……」

『あぁそうだな、たまにはいいか』

既に帰る準備をしている奉日本から誘われ

つけていたパソコンをシャットダウンして鞄を掴んだ

だが

「ちょーっとストップ。たっきーは俺と帰ろーか」

国府田さんが奉日本の首根っこを掴み、ニコニコ顔で立っていた

「え！？俺ですか！？俺、先輩と帰りたいんだけど……」

「いいよね？えいくん？」

『あー……どーぞどーぞ。ご自由に』

「ええ！？先輩！？」

『今日はいいだろ？次帰ればいいじゃねぇか』

それになんか、国府田さんは奉日本に用があるみたいだし

「……だってさ。さぁ、たっきー君！帰ろうか！」

「うわ！？ちょっ、引きずらないでください！こーださん！」

そんな奉日本の声は

走り出した国府田さんに引きずられるようにして、どんどん遠ざかっていった

「なんだあいつ、国府田に何かしたのか？」

「国府田さんと奉日本君ですか……意外な組み合わせですね」

『あ……獅子王さんも五百扇先輩も……帰るんですか？』

「ええ。お土産期待してるわ。獅子王さんも」

「期待されても困るんだがな……」

『ははは……お疲れさまでした』

二人も言葉を返し、帰っていった

…………

明日は父さんの命日……か

俺は硝子の向こうの夜空を見て

誰もいない暗い部署の中で息を吐いた