妖しげ儚げ裏世界 (ページ13)

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裏世界の裏事情―拾― ページ13

『はぁ……はぁ……』

俺は目の前に長く続く階段を見て心がポッキリと音を立て今にも折れそうになる

しかも腹が立つことにあの白猫は階段の無数にある踊り場で馬鹿にしているように見下ろしている

(可笑しいな……俺、此処まで体力落ちてたか？)

・・
どうも此処に来てから身体が上手く動かない気がする

……気のせいだとは思うのだが

……あー頭がズキズキしてきた

何だか吐き気もする

『うっ、ゲホ！』

咳が止まらない

立っているのに耐えきれず膝をついてしまう

〝ウマソウダ〟

『っ！？』

声が聴こえた

直接、頭に流れ込んでくる

片言の

印象に残る声

何処かで

聞いた事のある声だった

(痛っ……て)

痛みが増して頭を押さえながら後ろを振り向く

後ろに何かいるような気がしたから

(……何だアイツ……)

一つ下の踊り場の所に黒くて大きな蛇のような物が此方をずっと見ていた

身体は蛇のようなのに短い手足があり口は半月型

『…………うっ』

〝ウマソウダ、ヒサシブリノゴチソウニアリツケル〟

まさかアイツ俺を喰う気か……？

〝レアモノ、ハッケン

イツツボシ、イツツボシ〟

(五ツ星……？何の事だ)

兎にも角にも、判る事は逃げなければという事だ

このままぐずぐずしてたら喰われてしまう

『…ゲホ！ゲホ！』

……くっそ、こんな時に……

『………う…やべ……！』

それはいつの間にか俺の目の前にまで来ていた

〝ウマソウ、イタダキマス〟

それは大口を開け、向かってくる

……まさか、俺の人生此処までか？

場所も判らない所で変な化物に喰われて死ぬのか？

まだ19年しか生きてないのに？

嘘だろ

……嫌だ、死ぬかよ。こんな所で

死んでたまるか！

〝……ウ…！ギギギ……！〟

『…………！？』

異様な音がして閉じていた眼を開けるとそれは固まっていた

……いや固まっているというより見えない糸に引っ張られている気がする

〝クソ……！コンドコソ、カナラズクッテヤル〟

そんな声が聴こえた気がするとそれは消えた

『……はぁ……！はぁ……！』

(何だったんだ……一体)

でも……死なないで良かった……

恐怖から解放されたのか肩がいきなり重くなった

「……アレ……？何で此処にヒトがいんの？」

また声が聞こえた

さっきとは違う直接的な声だ

下を見ると桔梗の花を持った金髪の少年が此方を見上げ、微笑んでいた