1話 ページ3
五条視点
「は？」
春、教室にて。
呪術師界にこの身をおいて十数年。この学校に入学して数日。
変わり者のほうが多数を占めるこの場では多少の異常は日常茶飯事。
あぁ、呪言師の類か。
"視"なくても分かる、ぜってぇー弱い。
「傑、硝子」
「ああ、分かってる」
傑も硝子も分かってるみたいだし。
そんじゃ呪力で頭を守って、後は寝るか。
「あぁ、感想文とかはないですよ。君達はただ『聞くだけ』で良いので。」
ン"ッン"という咳払いとともにそいつはゆっくり話を始めた。
「あるところに、3人の兄弟がいました。」
「3人はとても仲良しで家ではいつも笑いが絶えません。」
「…」
何秒かの沈黙。
しかしそいつは気にする様子もなく、3人のおうちは森の中、と続ける。
「3人がタンスを開けると大量のゴキブリがザザーンザザーン」
ザザザザ、ブーン、バチバチバチ
気の所為か…？教室の左奥にあるのは掃除用具入れだったよな…。それにしてはこの間相手にした路地裏の呪霊みたいな奇っ怪な音がするような……。
いや…………、まさか、
「『開けろ』」
あと、僕の方には来ないで下さい、とそいつは無慈悲に言い放った。
その瞬間、いとも簡単に扉は弾け飛び、ギチギチに詰まっていたゴキブリ達が教室中に飛び交い始めた。
「なっ」
「3人は涙が止まりません。」
「っ！」
くそッ！誘われた…！
そう気づいた頃には時既に遅し。
俺の目からは大粒の涙がとめどなく流れては落ちていく。
それは俺だけじゃないようで、傑も硝子も同じ様に涙を流していた。
「じゃあ後は皆で頑張って下さい。」
「待てよっ！」
クソ教師が！！
この地獄絵図を残しガラガラと退室しようとするそいつに手を伸ばすと、指先にマフラーが引っ掛かり、解けた口許から呪印が覗く。
するとそいつは一瞬驚いたような顔をしたが、俺に気づくとふっと微笑みを浮かべ、一礼して教室を出た。
その表情が、その笑顔が、今までに向けられたことがない類のもので、こんなことをしたやつなのに、何故か、
この人のことをもっと知りたくなった。
______________________
「術式順転！！」
「馬鹿か！教室ごと灰にするつもりか！？」
「クソッ！コイツ等ぜんぜん死なねぇ！！」
·
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1060人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
nanox(プロフ) - 三毛猫さん» コメントありがとうございます。申し訳ありません！編集の時に間違えて全体公開してしまってまして……もう外したので大丈夫だと思います！わざわざありがとうございます！嬉しいです。 (2021年4月17日 3時) (
レス) id: 12e3c64050 (このIDを非表示/違反報告)
三毛猫(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。いつも楽しく読ませて頂いています。棘君と主人公君とのほのぼのとした日常がとても癒されます…宜しければ続編の保護パスワードを教えて下さい。このご時世の中ですがお体に気を付け下さい。いつも素敵な小説をありがとう御座います。 (2021年4月16日 23時) (レス) id: d0bea6ab41 (このIDを非表示/違反報告)
nanox(プロフ) - EVENINGさん» コメントありがとうございます。実はマフラーの色は作者が優柔不断すぎて未だに決められていないんです…。青や黒など落ち着いた色を普段使いしてそうなイメージですね。季節や気分でも変えると思います。曖昧ですいません… (2021年3月26日 22時) (レス) id: 12e3c64050 (このIDを非表示/違反報告)
EVENING - 下のコメント間違えましたすみません。マフラーの色何色がいいですか？これからも頑張ってください。 (2021年3月26日 22時) (レス) id: 59440097ee (このIDを非表示/違反報告)
EVENING - あの、マフラーの色は何色ですか？ (2021年3月26日 22時) (レス) id: 59440097ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：nanox | 作成日時：2021年2月28日 23時
