14話 ページ17
A視点
__遅い…。
夏油との合同任務の後、少し待ってて下さい、と言われ外で待っている。
もう呪霊は全て倒し終わった筈。
まさかまだ残っていたのか…?と思い急いで戻ろうとすると、すいません遅れました、と夏油が出てくる。
「苦虫を噛み潰したような表情ですね。」
何かありましたか?と聞くと夏油は苦笑い。
「ほとんど言葉の通りですよ。私の術式の関係で、」
話を聞くと、呪霊を操るために経口摂取する必要があるらしく、どうやら本当に言葉の通りだった。
「すいません、配慮が足りませんでした。」
深々とお辞儀をすると、いえいえ、と無理矢理笑顔を作る。
帰り道を二人で歩きながら続きを話す。
「夏油君は他人の為に我慢ができる、優しい呪術師になりますね。」
えらいです、といつも棘にやるように頭を撫でようと、夏油の頭に手を伸ばしかけて空を切る。
「……すいません。」
夏油があんまり驚いた顔をするので、何だか恥ずかしくなって、マフラーに顔を埋める。
僕は守りたいと思う人のためにしか我慢ができないので、と付け足すと、
「弱い者を助けるために術式が、呪術師がいるんですから」
と笑う。
__……本当か?
その考えはあまりにも脆い。正しくないとは思わない。けれど、何かがあれば簡単に壊れてしまいそうな危ういものだと感じる。
夏油くん、と目線を合わせる。
「僕は弱いです。」
雑魚です、そう言うと夏油は何を言ってるんだという困惑の表情に変わる。
「けれど、君達を守りたいと思います。君達に守られたくないとも思います。」
僕も呪術師で、君も呪術師なので当てはまらないかもしれないですが、
「君の意志を尊重してください。」
僕の言葉で何かが変わるなんて思わない。けれど、伝えたいと、そう思ったから。
「君達が自分にとって悔いのない選択をしてくれれば、それが一番ですから。」
全てを拾おうとすると、全てを落としてしまうことになるかもしれない。
夏油は何か考えているのか黙り込んでしまった。
「すいません、出しゃばった真似を」
これ、お詫びです、と可愛らしいパンのヒーローが描かれたチョコレートを差し出す。
息子にもう卒業する、と言われたので…とため息をつくと、夏油は少しずつ笑顔になった。
「ありがとうございます」
晴れ晴れとした表情でチョコレートを受け取り、口に含んだ後、「…甘っ」と直ぐに苦い顔に戻った。
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nanox(プロフ) - 三毛猫さん» コメントありがとうございます。申し訳ありません!編集の時に間違えて全体公開してしまってまして……もう外したので大丈夫だと思います!わざわざありがとうございます!嬉しいです。 (2021年4月17日 3時) (レス) id: 12e3c64050 (このIDを非表示/違反報告)
三毛猫(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。いつも楽しく読ませて頂いています。棘君と主人公君とのほのぼのとした日常がとても癒されます…宜しければ続編の保護パスワードを教えて下さい。このご時世の中ですがお体に気を付け下さい。いつも素敵な小説をありがとう御座います。 (2021年4月16日 23時) (レス) id: d0bea6ab41 (このIDを非表示/違反報告)
nanox(プロフ) - EVENINGさん» コメントありがとうございます。実はマフラーの色は作者が優柔不断すぎて未だに決められていないんです…。青や黒など落ち着いた色を普段使いしてそうなイメージですね。季節や気分でも変えると思います。曖昧ですいません… (2021年3月26日 22時) (レス) id: 12e3c64050 (このIDを非表示/違反報告)
EVENING - 下のコメント間違えましたすみません。マフラーの色何色がいいですか?これからも頑張ってください。 (2021年3月26日 22時) (レス) id: 59440097ee (このIDを非表示/違反報告)
EVENING - あの、マフラーの色は何色ですか? (2021年3月26日 22時) (レス) id: 59440097ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nanox | 作成日時:2021年2月28日 23時