34話 ページ38
「ヒッ、……ァ、ヒィッ!こっちに来るなぁっ!」
男はちっぽけなナイフを情けなく振りまわす事しか出来なかった。
ただの四級術師だ、これだけの人数がいれば余裕だろう、と油断していたのだ。
「言いたい事はそれだけですか?」
こいつは悪魔だ。
A視点
結局、家に帰っても棘の姿は無かった。
ただ棘のものではない残穢が残っていただけ。
相手も僕に負けず劣らず雑魚みたいだ。
女が一人で活動していない事はなんとなく分かっていた。
そしてその組織に兄が加入していた事も。
__取り敢えず、どうでも良い。
棘のこと以外心底どうでも良い。
顔に飛び散った血を拭う。
「ヒッ、いや、いやぁぁ!」
「お前狗巻さんの弟だろっ?俺ぁあの人と友達だったんだ!なあ、見逃してくれよ!!」
「息子がっ!息子がいるんです…ッ!お願いします!お願いしますっ!!」
「死にたくないぃっ!死にたくない…!!」
人を斬った。
人を殴った。
人を殺めた。
「お前、女や子供もいただろ……?」
気絶した棘にナイフを突きつけている男は怯えた表情でこちらを見ていた。
「あぁ、昨日あの女を見逃したのは棘がいたからですよ。」
勘違いされてしまいましたか、と笑みが溢れる。
「お、お前の兄貴が守った組織だぞ…?」
「はい、だから今まで放っておいたじゃないですか」
僕の中で優先順位があるんです、と指を折りながらゆっくり近づく。
「一番に棘と生徒達、次に夜蛾先生や兄さん、そしてその次に僕自身です。」
「お前らは入ってない」
けど、兄さんの大切な物だから見逃してあげてました。
僕の足は止まらない。
「くッ、来るなぁ!それ以上近づいてみろ!」
こいつがどうなってもいいのか!?
犯人が言う言葉の定型文の様な事を言い、男は棘の首元にナイフをあてがう。
「『棘を離して死ね』」
「俺は呪力で守れるからな!呪言は効かないぞ!」
もう何も考えられないのか、男は子供のように叫ぶ。
「ええ、ですから『死ね』と言っているんです。」
男は目の前で何が起こっているのか理解出来なかった。
文字通り一瞬にして僕は男の背後をとったのだ。
僕はまだ領域展開の限定解除を続けていた。
その状態で相手に『死ね』と言うと相手が死ぬだけの身体能力が僕に備わるということに最近気づいた。
僕の呪言は相手に使うより僕自身にバフを盛る事に特化しているようだ。
「棘、おかえり」
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nanox(プロフ) - 三毛猫さん» コメントありがとうございます。申し訳ありません!編集の時に間違えて全体公開してしまってまして……もう外したので大丈夫だと思います!わざわざありがとうございます!嬉しいです。 (2021年4月17日 3時) (レス) id: 12e3c64050 (このIDを非表示/違反報告)
三毛猫(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。いつも楽しく読ませて頂いています。棘君と主人公君とのほのぼのとした日常がとても癒されます…宜しければ続編の保護パスワードを教えて下さい。このご時世の中ですがお体に気を付け下さい。いつも素敵な小説をありがとう御座います。 (2021年4月16日 23時) (レス) id: d0bea6ab41 (このIDを非表示/違反報告)
nanox(プロフ) - EVENINGさん» コメントありがとうございます。実はマフラーの色は作者が優柔不断すぎて未だに決められていないんです…。青や黒など落ち着いた色を普段使いしてそうなイメージですね。季節や気分でも変えると思います。曖昧ですいません… (2021年3月26日 22時) (レス) id: 12e3c64050 (このIDを非表示/違反報告)
EVENING - 下のコメント間違えましたすみません。マフラーの色何色がいいですか?これからも頑張ってください。 (2021年3月26日 22時) (レス) id: 59440097ee (このIDを非表示/違反報告)
EVENING - あの、マフラーの色は何色ですか? (2021年3月26日 22時) (レス) id: 59440097ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:nanox | 作成日時:2021年2月28日 23時