ダメか、痛いや ページ10
砂煙が酷い。
こういうときはね、大体煙の中歩いてくるんだよ。
ほら
「やはりその術式は…あの子のものだね」
「その無駄な優しさもそっくり」
「悟が羨ましくてしょうがないよ。君のこと、もっと早く見つけたかった」
夏油は一応吐血しているものの口元を拭えば直ぐに消せる程度の血の量だ。さんざん地面やら建物やらに撒き散らした私とはまったく量が違う。
ぶっ倒れている私の前で夏油は歩みを止めた。視界がぼやけてきている。
「安心して、君のことを殺すつもりはない。大丈夫だからそこで寝ていてくれ」
頭にそっと手を置かれたかと思うとそのまま意識が遠のいた。あーあ、もう少し長く戦えたらよかったなぁ…
──
「やるね、この子が守ろうとするだけの価値はあるということかな？」
「Aをこんなんにした奴の言うセリフじゃねぇだろ」
パンダの拳が夏油を襲う。
帳が破られたことには気がついていたが、侵入地点からここまで五分程度はかかるだろうと侮っていたし、Aのことの方が夏油には大事だった。
一発殴って夏油をはね飛ばした一瞬でパンダが辺りを見回せばよく見なくても分かるほどの血痕。視界に入るものほぼ全てにAのものと思わしき血液がある。
ここで何があったかなんて一目瞭然。
この出血量では長く持たない。夏油を殺しすぐに反転術式を施さねばAは死ぬ。
夏油はまたしても幾体もの呪霊を取り出すが、パンダはそれを、振り祓う。
真希も見つけた。赤い糸があるのを見るにAが引っ張り比較的安全な場に移動させたのだろう。
それに一瞬気を取られただけだった。
「よそ見」
頭が追いつかない速さで、顎と腕を蹴られる。
夏油傑。その階級は特級。
当然体術も優れている。
しかし自分、つまりパンダがこの戦いのメインでは無い。
「棘！！！」
それに応え、狗巻棘は呪いを放つ。
『堕ちろ！！』
夏油を中心に地面は勢いよく陥落する。
喉から血を吐き出す。
攻撃力の高い言葉で、特級相手に、呪言を向けたのだ。反動がいつもよりありすぎて思わずしゃがみこんでしまう。
パンダが「大丈夫か」と駆けつけてくるがこくりと頷くだけで答え、地面に伏せきっているAの方へと向かう。
いつもの綺麗な腕には切り傷の他に呪霊のものらしき噛み跡もいくつもある。自分で噛み切ったのかもしれない。
いつもの輝いているあの目も今は固く閉じきっている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 302人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蘆花(プロフ) - お蕎麦さん» やァァ！！レスが遅くなって申し訳ないです！初コメありがとうございます！！続編決まったので頑張らさせていただきますね！ (4月18日 23時) (
レス) id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
お蕎麦(プロフ) - 初コメ失礼します！！一気みしてしまいました、、2からの3などはどうでしょう、、！！どちらも見たいです！！欲張りですみません！！！ (4月11日 21時) (レス) @page36 id: 38dca48b3e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠ユキ(パイプを許すな)(プロフ) - �△鮓�てから��を見る...欲張りすぎですかね... (4月11日 20時) (レス) @page36 id: 785e1889ff (このIDを非表示/違反報告)
千菜(プロフ) - 完結おめでとうございます！�△盡�たいですし��も捨てがたい……！！ (4月11日 19時) (レス) @page36 id: 4f425976bb (このIDを非表示/違反報告)
蘆花(プロフ) - なっしーさん» 初コメありがとうございます！オタクはみんな語彙力が豊富ですからね…(？)ラストまでお楽しみください！ (4月10日 22時) (レス) id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蘆花 | 作成日時：2024年4月4日 21時
