【旧バージョン】僕のクレイジーDAYS (ページ13)

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２号室の人ページ13

動くべきか、動かざるべきか。
落としたペンは拾ったものの、もはや僕の心はノートの上になかった。

さっきの音は怖かった。
怖いけれどもすごく気になる。

２号室の人って、一体どんな人なんだろう。

気がつくと僕はまた立ち上がり、ノートをほったらかして３号室のドアを開けていた。

うん、挨拶だよね、これは。
越して来た人に気づいた時点で、「これからよろしく」を伝えに行くのは大事な事だよね？
僕は自分で自分を納得させる。

リーフさんに会った時はびっくりして、ちゃんと自己紹介が出来なかったけど、今度は大丈夫。

まず「こんにちは。初めまして、３号室のリーハです。」って言おう。それから後は相手の話に合わせて……

僕はドキドキしながら２号室の前に立った。
そして、ノックをしようとして手を振り上げたまさにその時。

２号室のドアが内側にパッと開いた。
僕は部屋に倒れ込みそうになり、危うい所で踏みとどまった。

顔を上げると、全身黒の服に身を包んだ男の人が、腕組みをしながら仁王立ちしていた。
そして男の人は、黙って僕のことを凝視している。

……なんで？僕の顔になんかついてる？
あ、それより自己紹介……。

「こ、「『こんにちは。初めまして、３号室のリーハです。』って言いたいんだろう？
それは分かっている。わざわざ言わなくても大丈夫だ。ついでに、お前さんが医大の受験に落ちた後、親からの電話で帰省を促されたのにも関わらず、夢を諦めきれずに亡くなったお爺さんが残した資金を使ってサンクチュアリに越して来たということも分かっている。」

え？えーーーっ？！
自己紹介を知らない人にされてる？！

呆然としている僕をよそに、男の人はニヤリと笑い、おまけにウィンクをした。

「驚いたか？」
「お、驚くも何も……えっと、」
「俺はシャーロックだ。」
「シャーロックさんは、魔法使いですか？！」
「死神の馬と呼ばれることは、ある。」

ど、どう返したら良いかわからない……。
僕は曖昧に笑って流したけど、シャーロックさんは別に気にはしてないようだった。

「俺は探偵をやっているのさ。お前さんの事が分かったのも、窓から見たお前さんの部屋や今着ている服を順序に従って観察したからだ。」

えっ、僕の部屋を窓から見た？
えっ？どういうこと？
「あの、僕の部屋を窓から見たって……。」
僕は我慢出来ずに聞いた。

シャーロックさんは「あぁ」と頷いた。