音の波紋を、雷へ【イナズマイレブン】 (ページ25)

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◇ 帝国戦 08 ページ25

◇◇◆◇

「神童A。」

自陣へ戻ろうとしたAに、かかった低めの声に動きを止める。
そして振り返ると鬼道有人がこちらを見据えていた。

「まさか君が私の名前を知ってるなんてね。」

「知ってるさ。同じゲームメイカーとしてな。」

「へぇ？」

「そんな事より…何故こんな弱小校にいるんだ。」

「……それは、どういう意味かな？」

「そのままの意味だ。お前のような強者なら、他の強豪校でも充分だろう。」

「……、さぁね。私もよくわかんないよ」

「けど確実なのは…」と神童は鬼道の目を見ながら続けた。
相変わらずゴーグルに隠されていてその目は見えない。

「あのキャプテンのサッカーに、惹かれただけ」

じゃあね、と手を振りながら去っていった。
その背中を見ながら鬼道は思う。

口には出さなかったが、長年同じポジションの選手としても、ゲームメイカーとしても尊敬する存在。
その存在に、たかだか弱小校のキャプテンに惹かれたと言葉に出されるのは気分が悪い。

胸の内の気持ちの悪い感情を隠す様に、鬼道は自陣へと戻った。

◆◇◇◆

試合再開。
神童は先程のようにタクトを用いようとするが────

「囲め！」

鋭い鬼道の声が遮り、一瞬のうちに帝国の選手に囲まれた。
これにはAも内心悪態を付く。

神のタクトは傍から見れば強い技に見えるが、時と場合によって使い物にならなくなってしまう。
今のようにパスルートが遮られてしまえば、たちまち使えなくなってしまうのだ。

(くそ、これじゃ……！)

囲まれるのを避けても、また次に選手が来てマークされる始末。
その間に、雷門イレブンは帝国イレブンにボールを当てられる。露骨にAは避けられている。その事に気付いたAは、小さく舌を打った。

雷門イレブンは痛めつけられ、目金とA以外立ち上がれなくなっていた。