音の波紋を、雷へ【イナズマイレブン】 (ページ18)

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◇ 弟ページ18

◆◇◇◆

「ねぇさま、どこか行っちゃうの…？」

舌っ足らずな口調で、Aの足に抱き着きながら話すのは弟の神童拓人だった。

その瞳には、寂しいという感情を表すように涙が浮かんでいる。
Aは拓人と同じ目線までしゃがみ、その涙を拭って頭を撫でる。

「お姉ちゃん、今からチームメイト…仲間の所に行かなくちゃいけないんだ。」

「ねえさまの、…」

「だから拓人、家で少しだけ待っててくれないかな。今日帰ってきたら一緒にお姉ちゃんと拓人の好きなこと沢山しよっか」

「たくさん…！なんでも、いいの…？」

「勿論。なんでも」

「じゃあぼく、ねえさまと一緒のサッカーしたい！」

「いくらでもいいよ。」

嬉しげに笑みを浮かべた拓人は、短い手で必死に姉の首に手を回し、ぎゅうと抱きつく。
そして、ポツリと。

「ねぇねが言っちゃうのはちょっとさみしいけど…待ってるから！いってらっしゃい！がんばってね。」

「…！うん。行ってきます。」

両親の仕事の手伝い、部活。
その事であまり弟に構ってやる時間が少なく、寂しい思いをさせてしまう事に心苦しくも感じる。

(今日は沢山、構ってやりますかね。)

愛する両親、そして愛する弟の応援を心の中で噛み締め、Aは使用人の運転する車へと乗り込んだ。

◆◇◆◇

一方。

〈さあ、後半戦のスタートです！圧倒的な帝国リードの前に、どう立ち向かうのか雷門イレブン！〉

試合のホイッスルが鳴る。
帝国のキックオフ。鬼道がボールを保持したかと思いきや邪悪な笑みを浮かべ口を開いた。

「行くぞ…〝デスゾーン〟開始」

その言葉を合図に、FW陣が上がっていく。
鬼道はその後ろからパスを出した。

「そして奴を…奴等(・・)を…引き摺り出せっ！！」

鬼道のパスしたボールを中心に寺門、佐久間、洞面秀一郎が回転しながら三角形を描き、そのボールには禍々しいパワーが宿った。

「「「 ──── 〝デスゾーン〟！」」」

「…！！っぐ、ぐぁあ！！」

ノーマルシュートとは桁違いなパワーに、円堂は受け止め切れずネットまで弾き飛ばされた。
円堂に、雷門イレブンに…無慈悲な声が掛かる。

「続けろ！奴等を炙り出すまで…」

それから、蹂躙が始まった。

「〝サイクロン〟！！」
「うわあああぁあ！！！」

半田が万丈一道の必殺技に弾き飛ばされ、

「〝百裂ショット〟！！」

寺門の必殺技が雷門イレブンを襲い。