気象系の女王系紅一点お嬢様《過去編》 (ページ5)

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◇1994年ページ5

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そして、入所から3年。
嫌がらせは前よりかは少なくなった。私が特に何も反応しないことにつまらなくなったのだろうか。

けれどやはり、完全に無くなったりはしない。

(今日も練習しよ…)

振付師の人に頭下げてまでお願いした。暗くなり皆がそれぞれいなくなった時に、レッスン室で一人練習する事。
オーディオから鳴る音に合わせステップを踏む。

──────────ダンッ

私の靴が鳴らす音が部屋に響く。楽しい、楽しい、楽しい。口角が上がっているのがわかる。
音は、私の物だ。

───────────ダンッ。

最後のステップが終わり、息を切らす。汗が流れているのでタオルで拭こうと、後ろを向いた。

そしてその顔が向いた先に、何かいた。

「うわっ、！！！」

変な声を漏らした私に、その男は特に表情も変えずに私をただ見つめていた。

…この男、よく見れば見覚えがある。
大野智、今年入所した私と同い年の奴。表情があんま変わんなくて何考えてるかわかんない奴…

「な、何か用？」

「…今のステップ、どーやったの」

何をと思えば、口から紡がれた事は単純なもので。変に緊張していたのが馬鹿らしくなって、思わずふはっと笑った。

「いいよ、教えてあげる。その代わりあんたの事も教えてね。」

＊＊＊＊

次の日、レッスンが終わり帰ろうとした。

そして鞄を持とうとすると、その有り様に目を見開いた。

切り裂かれているタオル、マーカーで落書きされているシューズ、鞄。

少なくなってきたとはいえ、嫌がらせは終わらない。これをやっている奴らは、認める認めない関係ないのか。

胸のつっかえを潰すように、くしゃりと胸元を握る。

──────悔しい、くやしい、くやしい！！！！
…わたしは、ただ。

歌って踊りたい、だけなのに。

「…なに、してんの。」

その声に振り向けば、そこに居たのは大野で。
そして、振り向いたせいでこの惨状を不覚にも見られてしまった。

なんのタイミングか、向こうから嫌がらせしたであろう男達が歩いてくる。そして私を見つけると、口を歪ませて嘲笑ってくる。

人を嬲るのが楽しくて仕方がない、というように。

嗚呼ほんと、嫌になる。