◇ ページ13
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─────舞台の幕が上がり、そのステージの中央には和装に身を包んだ少女が。
その名は、「音」
「音様、また歌ってらっしゃる…」
「美しい歌声だが、早く嫁ぎ先を見つけないと…、」
その囁き声を聞き、美しい瞳をほとりと伏せる。
─────何故、わたしを理解してくれぬのか。
「見て、音様よ。」
「相変わらずお美しい…」
「この前もお見合いを申し込まれたらしいわ。」
ひそひそと隠しもせず噂話をする者たち。
─────何故、わたしの歌声を聞いてくれない？
そして場所は、屋敷の部屋に映る。
その部屋には少女が座る前に、両親がいた。
「お父様、おかあさま、…わたしの歌声は…何故届かない…？」
震えながら、美しい瞳を伏せまろやかな頬を涙に濡らせながら問いかける。
その姿に両親は穏やかな表情を浮かべながら抱き締めた。
「周りの者にはおまえの歌声が届いて居ないかもしれない。けれど、私達には届いているよ。」
「ええ、そうよ。…音、私達の可愛い娘。あなたは自由に、自分の思うままに歌えばいいの。母様達はそれを願っているわ。」
所変わり、昔からの使用人のばあやに着付けをしてもらっている音。
ばあやはしわくちゃの手を音の手に重ねながら言葉を紡ぐ。
「音様、ばあやはね。音様の歌っている姿が一等に好きなのです。…まるで、精霊のようで。」
「精霊、…？」
「むかしこの時期…ばあやが行った、この先にある沢がありまして。そこは水の音や動物の鳴き声が重なり合って、まるで精霊が音を紡いでいるような…」
そんな馬鹿なことを、と言おうとしたがあまりにもばあやの目が優しくて、暖かくて。音は口を噤んだ。
「あなたの音は、とてもやさしいのですよ。音様。」
しわくちゃの手が、暖かかった。
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作者名：ちきんたつた | 作成日時：2023年9月23日 4時
