気象系の女王系紅一点お嬢様《過去編》 (ページ11)

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電話と誰かと話すということになれていないのだろうか。
いつもなら軽く笑ってからかう所だが、今はそんな余裕もあるはず無く、力無く返した。

その沈んだ声に鋭い大野は気づいたのか、「…何かあったの？」と返してくる。

「…いや、」

大『なんでもない筈が無いでしょ。いつもならイキイキして歌やダンスのこと話すのに、ずっと暗いもん。』

「…」

…ほんと、鋭い奴。

「大野」

大『？』

「がんばれ、って言ってくんないかな。」

ありきたりな言葉でいい。今はただ、背中を押して欲しい。伝わる筈も無い気持ちを心の中でこぼす。

だがこの男は、分かってる、というふうに笑うのだ。
きっと向こうでいつものへにゃりとした笑みを浮かべている事だろう。

大『Aが誰より努力してるのも、全部分かってるよ。負けるな、がんばれ、A。』

「…ふは、上等。」

もう、苦しみは無かった。

＊＊＊＊

─────これは、想像以上だな。

周りのスタッフも、ほう…と見惚れているのが分かる。
その視線を独り占めするのはひとりの女の子(アイドル)。

「ユラリユルレリ」

「泡沫 ────────...♪」

精霊の様に、はたまた蝶の様に音を紡ぐ少女。
その音は、見る者聞く者全てを魅了する様。

彼女を見つけたのは偶然だった。昔から知り合いのジャニー社長がスカウトした新人、しかも異例の女子という話を聞いて興味本位でレッスンの様子を見ていたのだ。

指の先まで力を込めた変幻自在のダンス、そしてその存在感。僕はきっと、この子が男でもスカウトしていただろう。

世界はまだ知らない。月乃Aという音を、アイドルを。
当然その立場として批判は食らうだろう、けどこの子は、そんなものには負けない。

それは予想じゃない、確信だ。

ひとりのアイドルの成長に、楽しみだ、と心を踊らせた。

プロデューサー side終

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