その烏、女騎士。 (ページ15)

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第012話【立っていたい】ページ15

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夷守Aside

日向「…確かに、中学ん時も、今も。俺、跳んでも跳んでもブロックに止められてばっかだ。」

バレーボールという競技に、高さは必要。いくら日向が身体能力高くても、圧倒的な身長差は埋まらない。
そこまで言った日向は、「だけど」と続ける。

日向「─────でも、あんなふうになりたいって思っちゃったんだよ！…だから、不利とか不向きとか関係ないんだ…

この体で戦って、勝って勝って、…もっといっぱい、コートにいたい！」

ああ、わかる(・・・)。
男子試合に唯一参加出来る女、良い様に捉えれば光栄な物に思えるかもしれない。…けれど、現実は甘くない。

男よりも細い腕、脚…華奢な身体。
賞賛の声に紛れ、囁かれる言葉。

『結局は女だ』
『男狙い』
『男と試合したって無駄に決まってる』

そんな体験をしたからこそ、日向の気持ちは…それとなく分かる。

月島「はァ…だからその方法が無いんでしょ、精神論じゃないんだって。

キモチで身長差が埋まんの？リベロになるなら話は別だけど。」

…まぁ、それはそうだよな。精神論で何とかなるという訳じゃない。何かを得る為には行動を起こさなきゃいけない。

そんな事を考えていると、影山が月島に向かって口を開いた。

影山「スパイカーの前の壁を切り開く……その為のセッターだ。」

王様が、王冠を捨てようとしてる。
しかもそれまでに導いたのは、技術も無い、影山と敵対していた日向。

少し、波乱の予感だ。

＊＊＊＊

何やらわーわーと日向達が騒いでいるのを眺める。
あれは…作戦会議？作戦会議にしては騒ぎすぎだろ。

山口「作戦会議…ですかね？」

「…さぁ？でもスグに何かしら出来るって訳でも無さそうだし、取り敢えずさっきと同じ様にプレーしよっか。」

山口・月島「「はい」」

こちらのサーブで試合が始まる。

「月島ナイッサー」

山口「ツッキーナイッサー！」

月島のサーブで試合が動く。それを日向が拾い、影山のトスが上がった。それを日向が打つ──かと思いきや掌を通り過ぎていった。

影山「おい！！何してるッ！もっと早く……、ッ！」

そこまで言って影山は口を噤む。成程これが王様と言われる所以ね。

月島「出た王様のトス〜！」

影山「チッ……」