音の波紋を、雷へ第五章【イナズマイレブン】 (ページ10)

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◆ 指揮者は、笑わない。ページ10

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部活終わり、車に乗せてもらい家に着いて玄関のドアを開ける。
そしてピアノの部屋まで行くと丁度話したいと思っていた母親がそこに立っていた。

母さんは、私に「おかえりなさい」と言うと真剣な、何処か厳しい面持ちで口を開いた。

「....丁度良かったわ。貴女に話したい事があったの。」

そこで一旦言葉を区切った母は、少し顔を伏せて私の目を合わせた。....私と同じ色の目に、後悔の様な、悲しさの様な、そんな感情があった気がした。

「 ―――――― サッカー部を退部しなさい。これはお願いではなく、命令よ。」

ああ....、きっと母さんは、心配してくれているんだろうか。さっきの悲しい様な目は、そういう事だろう。

母さんは一度、私が壊れたところを(・・・・・・・・・)を見ているから尚更なんだろうな。

.....ここで承諾しちゃったら、また悲しそうな顔にさせちゃうのかな。母さんだけでなく、父さんだって、拓人だって。

...ごめんね、約束守れそうにないや、―――。

「ねぇ、母さん。」

「....何、言っておくけど断る事は許さな....」

「 ――――― わたし、音楽もサッカーも辞める。」

そこまで言うと、母さんの目が見開かれる。私がサッカーを辞める、という事にも驚いているようだけど、別の意味でも驚いているように見えた。

.....そっか、もう私、笑えてないもんね。

今度こそ本当に(・・・・・・・)、笑い方を忘れちゃったみたい。

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