◇ ピアノ ページ5
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【 神童A side. 】
部活が終わり、帰る時間。
今日は家の車が来ていてそれに乗って帰る。窓の外に走る景色をぼう、と眺めていると私の隣に座る私の世話を昔からしてくれた同い年の使用人…結城から声がかかった。
「お嬢様…、学校で何かございましたか？ここ最近、顔色が少し悪いように見えますが。」
「んーん、ただ寝不足なだけだよ。」
きっと結城には、この嘘もバレているのだろう。けれど本人はそれを追求する様子は無かった。
家に着いて、荷物を使用人に任せある部屋へ向かう。
玄関から少し歩いて左奥にある部屋。暗い部屋にパチ、と電気を入れるとは大きな目立つグランドピアノが視界に入った。
スカートが広がらないように抑えながら椅子に座り、鍵盤に指を滑らせる。
─────────.....♪
そのまま、思うように鍵盤を滑らせると部屋に染み込んでいくように音が拡がっていく。
そうすれば、ここは私だけの世界だ。
……ショパンの、『ノクターンOp.9-2』。
ノクターンとは夜想曲のことを意味する。
ピアノの音は好きだ。その音を聞くと、自分でいられる気がするから。……でも、
──────────ガンッ！！！！！
鍵盤が、歪な音を立てる。…それは、私の今の心情を表しているようで。
(ダメだ、だめだ、駄目だ。落ち着け、神童A。最後まで―――偽れ。)
お前なら、そんなこと容易いだろう？
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天才と、神童だと、謳われたお前なら。
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作者名：ちきんたつた | 作成日時：2024年2月8日 3時
