音の波紋を、雷へ第五章【イナズマイレブン】 (ページ38)

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その試合の前半が終了し、各チームはベンチに戻り一息つく。
Aがチームメイト達と作戦会議をしていると、不意に観客の声がAの耳に入る。

『風雅学園の方、圧倒的じゃん。』

『そん中でも圧倒的なのはあの女の子だな。』

『知り合いに聞いたんだけどさ、あの子あの神童財閥のご令嬢なんだって。』

『マジ！？じゃあ男子チームに混ざれてんの、コネってこと？』

『でも、すげえ実力じゃん。』

『まぁコネ云々より、神童財閥の令嬢ってんならあの実力も納得だわ。』

『確かに、確か神童財閥のトップ二人って凄い有名だよなぁ』

――――― 神童財閥の令嬢なのだから、当然だ。

観客の者たちが言いたいことは、概ねそういう事だろう。悪気があるかないか、どっちかと言えば後者だろうがAの表情は沈んでいく。

そんなAの肩に、腕が回る。

『あんな奴らなんかの言葉に動揺すんなよ、A』

『トワ…』

『あーいうのはAの本当の強さを知らないだけ、それに……お前の実力は、俺達がちゃーんとわかってるからさ。』

その言葉に、Aはチームメイトを見渡すと皆が笑みを浮かべてこちらを見ていて思わずこちらも笑顔が浮かんだ。

『…、うん、そうだね。――――― よし、みんな。勝つよ！！！』

『『『『おうっ！！！』』』』

そして、試合再開。
Aは先程の事もあったのか、前半よりイキイキとした表情で調子が上がっていた。
その影響でチームメイト達の指揮もさらに上がっていた。

そのせいで、相手チームの焦りは募っていく。

『っ司令塔の女子を抑えろ！！』

『はぁい、残念。』

相手チームの選手がボールを保持しながらそう言った瞬間、目の前にトワが現れる。
相手選手が目を見開いていると、トワはニヤリと笑った。

『確かにアイツは司令塔。だけど、それだけじゃあないんだよ。――― 〝ザ・ミスト〟』

トワが相手へ向かいながら手を振ると、徐に辺りに霧が散る。
その霧に相手選手が気を取られていると、霧の中から顔を出したトワがボールを奪った。

トワが前線へ走りこんでいたAへロングパスを出す。
そのパスを受け取ったAは、右足を振り上げた。

「 ――― 〝フォルテシモ〟」

その日から確実に…神童A、基、神の指揮者。

その名前は、広がって行った。