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『いいじゃないか！Aがサッカー、それに、A。お前にこそさっきじいちゃんが言った司令塔と言う役割が良く合う！』
Aの言葉に、嬉しそうに二カリと笑いながら言ったのは祖父で、Aはキョトンと祖父を見上げた。
『え？』
『お前は昔から聡い子じゃ。それに頭も良い。それを生かせるのが司令塔なんじゃよ！』
頭をしわくちゃの手で撫でられ、Aは目をぱちくりとさせるも次いで目をゆらゆらと不安そうに揺らし俯いた。
『おじいちゃん…でも、わたしピアノとかもしたい……一緒にするのって難しいのかな……』
『あら、じゃあそれを組み合わせたらいいじゃない。』
Aは突然投げかけられた、母の言葉に疑問符を浮かべる。母の方を見上げると、自分の赤い目とそっくりな目と目が合った。
『くみあわ、せる？』
『そう、貴方がしたいその音楽とサッカー。、…どんな形でもいい、貴方のしたい様に組み合わせて、フィールドで音を皆に届けるのよ。』
『とど、ける。』
『そうじゃA！お前は最近ピアノやヴァイオリン、音楽に一筋だったじゃろ。その音という武器で、選手達を導ける！』
『その様に言うなら、Aは司令塔というより指揮塔ね。』
『お、上手いこと言うね。』
『おじいさんったら、自分の事のように騒いじゃって。』
両親や祖父祖母の会話を横目に、Aは自分の手に目線を落とす。
先程テレビで見た指揮棒を振るように、手を動かしながらフィールドを動かしていた選手。
『(わたしも、あんな風に……)でも、わたし……点も決めたいよ。』
突然の、Aのその言葉に家族は顔を見合わせる。
Aの目に輝いて見えたのは、司令塔だけではなかった。
もちろんフィールドにいるサッカー選手達みんなが輝いて見えたのだが、その中でもAの目に止まったのは司令塔と点を決めるストライカーだったのだ。
俯いたAの頭に、ポンと手を乗せられる感覚がした。
それは、父の手だった。
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作者名：ちきんたつた | 作成日時：2024年2月8日 3時
