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【 神童A・幼少期 】
神童邸にて、両親が仕事で忙しいため幼いAの面倒を見る為に祖父祖母が来ていた。
今は両親も仕事の休憩中で、リビングにて皆集まりテレビを見ている。
『…？ねぇ、おばあちゃん、あれなあに？』
今月にある発表会で披露するピアノの楽譜を読んでいたAの耳に入ったのは何か歓喜するような声と、人々の熱狂的な歓声だった。
そしてその音の発生源に目を向けると、テレビで何かやっていた。それがAには分からなかったため、色々なことに詳しい祖母に聞いたのだ。
『あぁ、あれはね、【サッカー】っていうスポーツよ。』
『…さっかー？すぽーつ…』
『そう、一つのボールを蹴りあって、ゴールを決め合うんだよ。』
Aは祖母の説明に耳を傾けながら、もう一度テレビへ目を向ける。すると、数々いる人の中でAの目に入った人物がいた。
『ねぇ、あの指さしたりこえあげてるひとは…？』
『おっ、いい所に目をつけたなA！』
Aの発言に嬉しそうに声を上げたのは祖父だ。彼は大のサッカーファンで、Aの隣に座ると大きな身振り手振りをしながら話す。
『あれは司令塔と言う役割を持つ人なんじゃ！ゲームメイカーともいうな。』
『しれいとう、』
『ああ、ほら、あの選手はフィールドの色んなとこや選手へ指差しながらプレーしてるじゃろ？』
『…ひとにゆびさしちゃだめだよ！』
『わっはっはっは！！まぁそうじゃな。けど、あの指差してるのは、言わば指揮棒だな。』
『指揮棒…コンサートとかでよく見る、指揮者さん？』
『そう、自分の思うままにフィールドを操り……相手に勝つ道を見つけ選手達を導く。』
『導く……』
祖父の言葉を反芻するA。
Aには、その『導く』、『指揮者』という言葉がよく耳に残り目に映るテレビのサッカーは何処かキラキラして見えた。
『それが、サッカーじゃ。』
『…わたし、さっかーやりたい。』
『『『『！！！！』』』』
Aがぽつり、と呟いた言葉に家族は目を見開いて目を見合わせる。そして同時に顔を綻ばせた。
音楽に一筋で、ずっと『何かをしたい』『これが欲しい』などと欲を言わなかったAが自分からしたいと言ったのだから、それが嬉しかったのだ。
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作者名：ちきんたつた | 作成日時：2024年2月8日 3時
