音の波紋を、雷へ第五章【イナズマイレブン】 (ページ16)

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◇ 泣き虫ページ16

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【神童Aside. 】

.....ふぅ、と円堂達が出ていった扉を見て息を着く。
着いた溜息は、どこか重くて。

その息とともに、腹の中にあるドス黒い感情が去ってくれればと願った。

すると、扉からコンコンとノックの音が鳴る。
その音は結城の時のような音ではなくて、子猫が引っ掻くような、そんな音だった。

私が知っている中で、そんな音を立ててノックするのは一人しかいない。

上がっていなかった口角を緩めながら声をかけた。

「いいよ、入っておいで。」

私の声と共に、扉を開けておずおずと顔を出したのは弟の拓人だった。

とたとた、と覚束無い足取りでこちらに来る拓人に同じ目線にしゃがみながら頭を撫でた。

「珍しいね、自分から来るなんて.....何かあったの？」

自分に出来る最大限に、柔らかく問い掛けると拓人は不安そうに目線を下に向けたあと私に目線を寄越した。

「ねぇさま、いたいの？」

その問いかけに、はた、と頭を撫でる手が止まる。
それに気付いた拓人は更に目を不安そうにゆらゆらと揺らしたあと、言葉を紡いだ。

「ねぇさま、ずっとピアノもサッカーもしてくれない....

それで、ちょっとこわいかおしてる。」

...この子は、最近私がピアノとサッカーを一緒にしてくれないことも、表情に変化があった事も、気付いているのか。

普段は泣き虫なのに聡い子だな、と我が弟ながら思う。
だからこそ、ちゃんと伝えなければならない。

「ごめん、拓人.....お姉ちゃん、音楽もサッカーも...もう出来ないんだ。」

「え、..... 」

拓人は、大きい目を見開いた後....私と、全く同じ赤い目にみるみる涙を溜めていく。

私が、泣かせてしまった。

拓人は私に縋るように、抱き着きながら服を掴んだ。

「やだあぁあ.....、！ぼくまだ、ねえねにピアノとさっかー、いっぱいおしえてもらいたいよ....！一緒にぴあのも、サッカーしたい.....っ、！」

いやだいやだと悲痛そうな面持ちで泣く拓人に、私は弱い力で抱きしめ返すしか出来ない。

.....情けない私(姉)には、そうするしかなかった。

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