音の波紋を、雷へ。第三章【イナズマイレブン】 (ページ29)

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◇ 帝国学園戦 03 ページ29

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「流石は神童だ…、っぐ、」

フィールドの外に出てスパイクとソックスを脱ぎ足を摩る鬼道。
するとその足に、徐に氷嚢が当てられる。
…その人物は春奈だった。
春奈自身、どうしてこうしたのかわからなかった。ただ勝手に体が動いていた。

(たった二人だけの兄妹なんだよ…？わたし、私ずっと…待っていたのに…)

治療を終えると何も言わず春奈に背を向ける鬼道。
それを見た春奈は、やはり兄にとって自分は邪魔だったのかと考える。
けれどその考えを遮るように、鬼道は口を開いた。

「…一度も無かった、」

「え…？」

「お前を忘れた事は、一度も。」

その言葉を確かに聞いた春奈は涙ぐみながら笑みを浮かべる。
様子を見守っていたAが安心したように笑みを浮かべた。

試合再開。
雷門の必殺シュートが次々帝国を襲う。

Aはボールをドリブルしながら上がろうとする。けれどその行動を遮る様に鬼道の鋭い声が放たれる。

「 ──── 囲い込め！！」

「…！」

その声を筆頭に、帝国の選手総勢四人がAを四角の中に閉じ込める様に囲う。
神のタクトを出すか、と見渡すAだが中々出せない。

(成程…、流石全国最強の帝国。雷門との練習試合の時、私が大勢の選手に囲まれたら神のタクトを出すのが困難だとわかったんだね。

しかも、パスが皆に届かないようにディフェンスも徹底してる。…やるね、)

Aは鬼道を見据えて笑い、それを見た鬼道もニヤリと笑う。

Aはなんとか隙を付いて豪炎寺や染岡にパスを出すが、帝国には源田がいる。
2人のシュートは完全に止められてしまった。

その様子を見たAは、豪炎寺を呼び掛けた。

「豪炎寺。」

「…ああ、」

咲山からボールを受け取った鬼道は、妹が治療してくれた足を見ながら必ず勝つ、と決意する。
そして、佐久間と寺門に顔を向け頷いた。

それに返した二人は鬼道を追い越して前線へ駆け上がる。

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