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まやかし ページ7



急に雨が降ってきたから、研磨の家に避難。わたしは傘を持ってないし、ちょっと濡れちゃったから研磨のスウェットを借りた。研磨と黒尾せんぱいとは家の方向は同じだけど、めちゃくちゃちかいわけではない。雨が強くなったらしい。お母さんが車で迎えにきてくれるらしいけど、時間がかかるみたい。

「Aゲームやろ、まえやったやつ」
「わたしよわいもんヤダ・・・」
「教えてあげるし。クロよんでくるから」

研磨が一階でお茶を入れてくれている黒尾せんぱいをひきずりこんだ。ゲームへの熱量がほかにはなくておもしろい。電源をいれて、コントローラーを差し込んで、カセットを入れて。一連の流れが手馴れていててきぱきしている。黒尾せんぱいはゲームはすこしたしなむ程度らしい。わたしでも勝てるかも。



「あっ、あっ、ねえ研磨、まける黒尾せんぱいつよい」
「そこジャンプ、ちがうそのボタンはビームだよ」
「あっ、ねえ、あっ、あーーー」

わたしの使っていたゆるキャラがぼこぼこにされて泣いてる画面が出て終了。黒尾せんぱいの勝ち。ごめんなさいゆるキャラ・・・・泣かせちゃった。
Aちゃん弱すぎない?と黒尾せんぱいに煽られる。そういえば似たようなこと研磨にいわれたな。事実だけどひどい。
クロ泣かせるから、と研磨がわたしの後ろにまわりこんで指示をだす。耳に研磨のくちびるがふれそうで、もうなにもわからなくなった。

「キャラ変えるからもどって」
「ま、またナセ?」
「Aに似てるしちょうどいいでしょ」

黒尾さんが何か言いたげにして、結局だいたんーとわらっておわり。わたしはナセに似てないと思う。こんな貧乳じゃないし、かわいくないし、太ももも二の腕も出るような服は着ない。
バトルスタート。研磨が後ろにいるせいか、指先が木の枝みたいに固まってがくがくする。ぜんぜん動かないしわからない。

「連打して、ちがうビーム出さないで」
「あっ、黒尾せんぱいまって、あっ」

すでにぼこぼこ。痺れを切らした様子の研磨が、わたしの手に重ねてコントロールを始めた。
骨のわかりやすい手だなとか、同じくらいの身長なのに大きいなとか、研磨のにおいのするスウェットだとかもうぜんぶがわからなくておかしくなりそうだった。
ゲームは黒尾せんぱいに逆転勝ち。ほぼ研磨のおかげだけど。

「ひーきすんな」

ズルだズル!とわめく黒尾せんぱいをクロうるさいと一蹴した研磨を横目に、熱くなったみみとうるさい胸を抑えることは出来なかった。

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作者名:そあ | 作成日時:2023年12月10日 22時

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