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我に帰れ ページ4

.※Aちゃんと研磨くんは同じ中学校

「Aさん?」


この人のことは、ちゃんと好きだった気がする。いま思えばこどもだましの恋愛ごっこだったのかと感じてしまうけど、中学2年生のわたしは恋心が未来のわたしによって、思春期の副産物に成り下がってしまうことをおそれていたはずだった。

「せんぱい」
「学校は、どう?」
「まあ・・・・」

歯切れの悪い返事だとわかっていった。気まずい空気がながれて、せんぱいはそれ以上なにもいわなかった。
中2のとき、つきあってたせんぱい。他校のぜんぜんしらない制服を着たせんぱい。
付き合って半年ごろに、このひとは、わたしの友達・ライカにほれて、わたしを振って、せんぱいはライカに告って、ライカはせんぱいをぶん殴ってふった。
お姫さまみたいな人がすきだったんだって、と誰かがわたしに囁いた。姫なんて望んだ覚えは無いのに、おまえは何物にもなれないと告げられた心地だった。

「あんなクソ男にだまされたおまえもおまえだけど」

わたしが姫なら隣に立てるおまえも姫だろ、と泣きそうなライカに抱きしめられたのを覚えている。ライカに何も思わなかったわけじゃない。ライカが目に見えて特別なのはわかっていて、ライカが悪いわけではないのもわかっていて、でもそうだねごめーーーんとかあはは今度から気をつけるとかそういうことを言える余裕もなくて、背中にまわりそこねた手だけがぷらぷら漂っていた。

「あのころ、酷いことをしたと思う」

俺は誓って浮気してないけど、親友に彼氏奪われるのはつらいよね。と同情じみた声で回想からもどる。ライカは奪ってないしかってに消えたのはせんぱいだけど、それをいう気力すら残ってなかった。
もう何も聞きたくなくて踵を返すと、電柱にすこしかくれた研磨をみつけた。もうそれだけでどっと癒されたような気がして、かけて話しかける。

「かくれないで」
「あの先輩苦手だし、おれ関係ないし、、」

目を逸らされる。人見知り発動ってところかなあ。せんぱいがなにやら話しかけてきているが、もう聞こえないふりをした。どうせ、もう会わないだろうし。わたしはお姫さまじゃなかったし。せんぱいに未練はないけど、他人からみてわたしは特別ではない事実が、再度つきささる。

「ないてる?A泣くと母さんに怒られるんだけど・・」
「ないてない」
「ないてるじゃん。泣かないで」

研磨の袖口で涙を拭られる。研磨のまえでしかなけないという奇妙な煩いはいつからだったっけ。
気まずそうにした研磨に、返す言葉はなかった。

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作者名:そあ | 作成日時:2023年12月10日 22時

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