勝率 ページ2
．
｢寝ないで｣
｢んあ｣
男の膝で眠りそうになるとか、どういう神経してるの。と研磨が顔を歪めた。わたしの胸は貧しいか貧しくないかの論争はわたしが勝利を迎え、そのまま腰から手を離して研磨の膝でうとうとしていた。研磨の太ももは細いけどかたい。
｢研磨いーにおいする｣
｢はずかしくないの｣
｢ぜーんぜん｣
研磨が顔を赤くしてそっぽをむいた。何照れてんの、と聞いてみたら、たっぷりの沈黙のあとに｢ナセに似すぎてるから｣と小さな声で言った。
｢そんなナセのことすきなの｣
｢いや、べつに｣
｢いやいや言うくせに腰からも膝からも離そうとしないのは、ナセににてるから？｣
｢ちがうってば｣
なんでそんなに面倒臭いこと聞いてくるの、と顔は歪めていたけど、わたしの背中を優しく撫でる。背中でもわかる綺麗な造形の指に撫でられて、そのまま、微睡みにおちた。
✤
✤
眩しくて、よりいっそう目を閉じる。ああそうだ、もう朝だ。脳が一気に覚醒していく感じがして、もそもそと目を開けた。まだ視界がぼんやりしているが、何か抱かれているような感じ。腕に包まれている･･？
｢うわあ！｣
研磨に抱きしめられながら眠っていたのだ。どくどくとなる心臓となんでもない顔をしている研磨。それでも大きな目の下には隈がくっきりと主張していた。
な、なにも抱きしめて寝ること無かったのに･･と研磨の腕の中で伝えてみたけど、Aが離さなかったのが悪いとデコピンされた。あんまいたくはない。
｢あ！ママには｣
｢母さんが伝えたよ｣
う〜ぜったいやらしいことしてたって思われてる。したかったよすきなんだもん。相変わらず研磨はちかいし。女の子なんだから安易に触らないで〜。って言ってたくせに。わたしはナセに似てるからいいのか？
｢何今更赤くなってるの｣
｢羞恥心くらいあるよお｣
｢意味わからない｣
男の膝の上で寝落ちたのはAでしょ。と頬をつままれる。ひ、ひどい。でも確かに正論なので言い返せない。
ていうか、こんなぬくぬくしている場合じゃない。わたしたちには、学校があるのだ。
｢時間｣
｢まだ五時だよ｣
｢じゃあ研磨もう少し寝れるね｣
隈、ひどいよ。と研磨の目元に触れる。ねこみたいでかわいい。研磨の腕から出ようとしたけど、服をくん、とつままれて、｢いかないで｣と超絶可愛い顔で言われてしまった。
｢ナセに、似てるから？｣
｢そうなんじゃない｣
なにそれ。返事にむっとしてみたけど、研磨の顔が可愛すぎたので、許した。
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作者名：そあ | 作成日時：2023年12月10日 22時
