おしえてあげます【国見英】 (ページ3)

今日:2 hit、昨日:46 hit、合計:5,715 hit

おしえてページ3

．

｢国見英！｣
｢なんですか｣
｢レシーブの仕方、おしえて！｣
｢いやです｣

部活が終わってから男バレの方に向かって、教えて欲しい！とお願いしたところ、なんで俺なんですか……。と国見英があからさまに嫌そうな顔をした。今日は金曜日だから、坂井ちゃんは彼氏とお泊まりデートをするために早く帰らなくちゃならないんだよ。できることなら坂井ちゃんに頼みたいけど、彼氏とのお泊まりデートは邪魔できない。

｢国見英、昨日わたしが作ったお弁当勝手に食べたじゃん｣
｢食べましたけど｣
｢かしひとつってことで。お願い、おしえてよー｣
｢……良いですけど、ひとつ条件があります｣
｢なに？｣

五億円欲しいとかいわれたらどうしよう。わたし今金欠なんだよ……！伊藤くんのためにつくったお弁当を豪華にする為にお小遣いけっこう使っちゃったの！そのお弁当も国見英の筋肉になっちゃったんだけどね……。
国見英はいつもの何考えてるのかわかんない顔のまま、わたしに一歩近付いてきた。かわいい顔してるなって思ってたけど、近くで見ると身長高いしただのイケメンなんだよね……。悔しい。

｢いい加減、俺のこと名前で呼んでくれませんか｣
｢……国見英くん？｣
｢なんでそうなるんですか｣

イヤ無理かもしれないって、わたしが顔を顰めて言う。人の名前呼ぶの苦手なの…！幼稚園からの付き合いである坂井ちゃんだってまだ名前で呼べてないし！国見英なんて出会ってまだ1年も経ってないから、フルネームで呼んじゃってるし！ハードルが高いっていうか……！！モジモジしてるわたしに対して、国見英がレシーブ練しなくていいんですか？なんてちょっと楽しそうな顔をして言った。やっぱり、顔、かわいい。

｢あ、あき……｣
｢ら、だけですよ。頑張ってください｣
｢あきら、くにみ……｣
｢なんでそうなるんですか、もう1回｣
｢国見！これ以上は！むり！｣

恥ずかしくって顔が熱い。きっと赤くなってるんだろうなっておもった。
国見は、"国見くん"なら教えてあげますって目を細めてくしゃっとわらった。笑ってる顔、かわいい。国見の顔、すきかもしれない。どう考えても、｢かわいい｣は身長が183cmある男の形容詞ではないけど、この後輩にはちょっと、割と本気で思ってしまった。
結局わたしは"国見くん"と言い直してしまったのだ。これはきっと、国見英の顔がかわいすぎるせい。

｢よし。レシーブ、教えてあげます。こっち来て｣

国見くんの声がいつもより甘く感じられた。きっとこれは、失恋ショックだ。伊藤くんにあげるはずだったお弁当を食べた国見くんに、伊藤くんを重ねてるだけだと、自分に言い聞かせた。