おしえてあげます【国見英】 (ページ17)

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逢瀬ページ17

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｢おいおまえ｣

首根っこを掴まれて、驚いて振り返るとめずらしく無気力じゃない後輩がそこに佇んでいた。おでこに汗を滲ませている国見くんは、わりと焦った表情をしていたけど、すぐに不機嫌な顔へと切り替わった。いつも何考えているか分からないのに、今日はわかりやすい。

｢及川さんは｣
｢かえったよ｣
｢まじおまえ最悪｣

及川じゃなくてわたしに結構キレてる国見くんに、座るよう促したら結構キレながら座った。もうこれじゃあ何方が後輩か分からない。そういえば、国見くんは普段は温厚というか、いつもダルそうなだけで、怒ると激昂型なんだった。

｢Aさん俺のこと好きですよね｣
｢えっ？？！！！｣
｢アンタ分かりやすいんですよ｣
｢えっえっえっ？？！？｣
｢俺のこと避け始めたかと思えば元カレに捕まってるし今度は及川さんとかまじ有り得ないです｣
｢えっえっえっ｣

ば、バレてたの？ぜんぜん混乱して何も分からないわたしに、｢付き合いませんか｣と一言だけいった。わ、わたしは、ろくな恋愛をしていなくてもそれなりに元カレもいるし、片思いもしてきた。薔薇を百本くれた人もいるし、エキストラを雇った人だっているけど、人生最高にいま、どきどきしてる。
それはきっと、もうみじめな恋愛にはならないとわかっているからだ。
いや、それいじょうにきっと。

｢わたしね、国見くんのことがだいすき｣

そう、国見くんが頭おかしくなっちゃいそうなくらいすき。
だから、つきあってほしい。静かにそう告げると、さっきまでの不機嫌が嘘みたいに国見くんがわらった。かわいい。ふふ、わたし、浮かれてる。
国見くんが早く店出ませんか。というので、及川が置いてったお金を持って会計に向かう。

｢えっ及川お金多めにおいてってくれてる、やさしい･･｣
｢付き合って早々浮気すんな｣
｢ええ！｣
｢驚くな｣
｢ええ･･･｣

鼻をつままれる。やっぱり痛くない。思わずふふ、と笑ってしまうと、何笑ってるんですかと顔を顰めた。ふふ。
及川が置いていってくれたお金でわたしのぶんまで払えちゃった。あとでお礼しとかなきゃ。とりあえず店を出ると、国見くんが思いっきりちゅーをしてきた。外で。

｢な、なんで照れてるの｣

わたしだって照れくさくて顔が熱いけど、国見くんのほうが赤いし熱そう。付き合う前はしてきたくせに。なんでもない顔で。

｢国見くんってさ、もしかしてわたしのことすごくすきだったりする？｣

うるせえ、と国見くんが赤い顔のまま鼻をつまんでくる。否定しないということは、そういうことなんだろう。