おしえてあげます【国見英】 (ページ11)

今日:18 hit、昨日:2 hit、合計:5,685 hit

密会ページ11

．

国見くんを送り出してから、坂井ちゃんと自主練を再開して十数分ほどでボールを片付けた。岩泉や及川はまだ自主練をしていくそうなので、ネットは片付けない。
部室にて、ジャージから制服に着替えながら、わたしは先程気がついたことを嘆いた。

｢国見くんのこと好きになっちゃったかもしれない｣

へえ、付き合えばって坂井ちゃんは言った。さっきも言われたソレ。国見くんみたいなハイスペとはどうあがいても付き合えないんです。わたしみたいなやつは！
よしよし、って坂井ちゃんがわたしの頭を撫でた。坂井ちゃんの手は好きだ。国見くんの手も好き。

｢さっき国見くんかわいい女の子に呼ばれて出てったでしょ？｣
｢アンタが私の事空気にしたときのこと？｣
｢ほんとにごめんそれは･･･｣
｢まあ、十中八九告白だろうね｣

こういうことがあるからハイスペを好きになりたくなかったのに。年下だって。わたしが知らないところで、何かをしていることが怖い。わたしみたいな女は、身の丈にあった人を好きになるべきなのだ。
そうしたら、酷く振られなくなるはずなのだし。

｢年下もハイスペもタイプじゃなかったはずなのに｣
｢卑屈モード？｣
｢うーん、たぶん｣

いつの間にか着替え終わっていた坂井ちゃんが、わたしの背中を摩る。泣いちゃうじゃんそんなの。ハイスペに恋しただけでこんな、絶望的な気持ちになるとは思わなかったけど。未知ってやっぱりこわい。こわいけど。悪いものでは無いのだ。しっている。そんなの。
死ぬほど惨めだった。彼に見合わないと自覚した上で恋をするのは、惨めだ。ぶっちゃけ好きになっちゃったかもしれないと言うだけで瀕死だった。

｢くすん｣
｢泣いちゃうの？ホラ、よしよーし｣

坂井ちゃんは存外わたしにあまい。国見くんとはちがう、細い指の小さな手が背中に回され、あたたかく抱きしめられたら、恥ずかしながらすこし安心した。坂井ちゃんはわたしよりも小さいその体で、わたしをすぐ泣き止ませてしまう。

｢国見はあんたのことだいぶ大事にしてると思うよ｣
｢舐めてるだけだとおもうもん、、かわいいこがいたらそっち大事にするだろうし｣
｢もー、あんたもかわいいって｣

わたしが卑屈モードの中、ネガティブ発言をしても坂井ちゃんは呆れ混じりでわらってくれる。国見くんにはこんな姿見せられない。伊藤くんにも見せられなかった。その前の彼氏も。
すぐネガティブになるのも、泣くのも、やめた方がいいとはわかっている。わかっているが、なかなか直せそうにないかもしれない。