Short Story (ページ5)

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Who You Love -5 ページ5

「この前いい映画観たんだ。Aも今度観てみろ」

「いま放送中のドラマの挿入歌、俺が歌ってるって知ってたか？」

「ジョンジナがミニョンと付き合ってるなんて俺は知らなかったぞ！」

それから、閉店後の作業中に何気ない会話を少しずつする様になって、開いていたはずの距離が縮まっていくのを感じる。

「イェソンさんて本当に色んなジャンルの映画観るんですね。一番のお勧めは何ですか？」

「勿論知ってますよ！ドラマも欠かさず見てます！」

「今さらですか？ジョンジンは結構前からミニョンの事好きだったのに...」

縮まる距離を感じる度に、楽しく話をする度に、自分の中の気持ちが膨れ上がって好きで、好きで...好きな事を実感していく。

「バカだな、そんな高い所にある物自力で取ろうとしないで俺に言えばいいだろ」
突然後ろから降りかかった声にドキリとする。真後ろにはイェソンさんが居て、被さるように後ろから延ばされた手から目が離せない。

「あり..がとうございます」
少し後ろを振り返ると、思った以上に近くに首筋ラインが見えて急いで目線を下す。

「Aってシフト毎回遅番だけど、デートとかしないのか？好きな人とかその年頃が一番楽しい時だろ？」
「イェソンさんです」
「え？」
話の脈略をふっ飛ばした私の回答に、ゆっくりとイェソンさんの顔がこっちを向き、聞き返される。

「ずっと前から..。好きでした」
数秒のはずの間も酷く長い沈黙に感じる。

「ごめん...俺好きな人いるんだ」
「はい、大丈夫です...分かっていましたから」
ぐっと喉元に涙がこみ上げる感触を飲み込んで、イェソンさんと向き合う。

なんでこのタイミングで言っちゃったのかなんて、私にも分からない。
ただイェソンさんが穏やかな顔をして話しかけてくれるから、ふとした瞬間に近くに居るから。抑えきれなくて、口から出てしまった。

「イェソンさん、ちゃんとその恋実らせてくださいね?!」
「あ、あぁ」
「すみません、今日はお先に失礼します」
なんとも言えない空気に耐えられなくて、逃げるように足が早歩きになる。

「A！ありがとう、言ってくれて」
「いえ、こちらこそ」

お店を出ると、抑える気持ちとは裏腹にどんどん涙が溢れてくる。
ちゃんと叶わないと分かっていたはずなのに。

通りに人が多すぎて思うように前に進めなくてイライラして、呼吸が苦しくなってきて、見上げてみても涙は止まることなくつたって、首筋を冷たくしていく。