41 ページ41
.
.
.
「そんなに前からだったんだね」
.
思い出すように話す言葉一つひとつが優しくて。だけど少し悲しそうに彼は言った。
ずっと海ちゃんばかり見ていたから彼からの視線に気づかなかった。
もっと周りを見れてたら、彼と自然に恋に落ちることが出来たのかな。
視線を感じて、不意に隣を見るとビー玉のような目と合う。
私をじぃっと見ていた。目、じゃなくて。私の瞳の中に映る自分を見ているようだった。
.
.
『ほんと、鈍感すぎ』
.
"いい加減気づけよ" と言った。
もう、気づいているよ。と言ってしまえば事の何かが始まってしまうのかな。
始まってしまえば、終わりが来てしまうのかな。
だったらもう始まったことすらなかったかのように、ずっとこのままで居れたら
終わりが来ることもこの先の人生で平野さんがいなくなることもないんだろうか。
きっとその選択肢が浮かび上がっって海ちゃんとの関係と後者と選んだ。
.
.
「恋ってしたくてできるものじゃないのよ」
『それは俺が一番知ってる』
「やり手だったなんて知らなかった」
『だって言ってないもん』
「どうしてそういう言い方しかできないのかな」
『まじうるせぇ』
.
.
言い合いなんていつもの事。
そりが合わないのもいつもの事。
だけどなぜだろう、彼のクシャっと笑う顔も眉を上げて乱暴なのも不器用なところも少し雑なところも隣にいる暖かさも私を見つめる瞳も全部全部私だけに向けばいいのにって思ってしまう自分がいた。
ただでさえこうやって私を想ってくれる人がいるだけでこの上ない幸せなのにもっともっとってそれ以上を求めてしまう、人間のいやな癖。
.
.
「私なんて全然釣り合わないよ」
『だれに？』
「平野さんに」
『平野さんじゃなくて、紫耀でしょ』
「は？」
.
『もう駆け引きとかめんどい。』
.
"さっさと好きになれ" って言いながら
私の頬を左手で包んで自分の元へと引き寄せる。
ふわっと香る彼の香水、その縮められた距離に息を飲む。
.
.
『強引な男は嫌か？』
『なあ、俺が怖いか？』
.
.
どうした。どうした、私。
どうも彼を目の前にすると落ち着かない。いつもの調子が出ない。
息を飲んだまま、彼を前に彼を見ることしかできなくなる。
.
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 864人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「平野紫耀」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もも(プロフ) - 私の端末がおかしいのかわかりませんが、４ページ目の紫耀の漢字が紫輝になってます (2021年6月19日 23時) (
レス) id: 573355469d (このIDを非表示/違反報告)
：む ぎ 。(プロフ) - 涼杜兄妹さん» コメントありがとうございます。今後はきっと絵に描いたような生活を送るかと思います(^^) (2021年3月7日 13時) (レス) id: 860fb48182 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - 完結おつかれさまです！好きな作品だったので終わってしまうのがさみしいです。2人がどんな生活をしていくのかが楽しみです♪ (2021年2月28日 20時) (レス) id: a89c13a921 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Shiro.
| 作成日時：2021年1月18日 22時
