恋に慕う＿＿【hidaka,ukisho】

36 ページ36

.





.





.





さっきまで楽しい時間だったのに。
今は緊張と恐怖で心臓がドキドキ…いや、バクバク。




.




教室からガヤガヤ聞こえる中、
誰もいない廊下を静かな廊下をペタペタと
履きなれた指定の靴で歩く足音。
外からは体育祭の準備をしている学生達に
ダンスの練習やら走り込みをしていた。

きっとこの学校のほとんどが体育祭という行事に
集中で盛り上がっているというのに、私はそれどころじゃない。




.




こんな時でも髪の毛が綺麗な優実ちゃん。
華奢でふんわり華やかな香りでスラーっとしてるのに
かわいらしい身長。こんな風に可愛かったら人生楽しいんだろうな。
なんて呑気な事を考えながら。
今までこういうイザコザには巻き込まれたくないと、
あれほど言っていたのに……。




.




.




.





.






しばらく歩いて立ち止まったのは体育館裏倉庫。
でたー！よく漫画やドラマで見るやつー！
このあとボスとかいう大きめの体の男の子とか出てくる！？
それとも外野が大勢いて私、コテンパンにされちゃう！？
うわぁ、こんなTHE！みたいなやつ本当にあるんだ……。
優実ちゃんも私と同じドラマ見て育ったのかな〜




.





(私の方がずっとずっと飛貴くんの事が好きだもん！)




.




いきなり、後ろも振り向かず声をあげた優実ちゃん。
目は見てないけれどハッキリ聞こえたその言葉。
真っすぐで真剣で一途で。嘘偽りない素直な言葉に、
こんなにも想える恋をすることは素敵な事だと思った。
私は臆病ですぐへこたれちゃうから、
自分の意見を言うのは得意じゃないけど
でもそれを理由に言わないのはやめようと思った。





.





どんなに怖くても、恥ずかしくても。
それが叶わなかったとしても。笑われても。
自分の気持ちを伝えるって素晴らしいことだと思う。




.




.




なんて思ったのもつかの間




.




「わわっ！！！！」




.





間抜けな声を出して地面に尻餅をつく私。
突然の事に驚いて顔を上げると
同一人物とは思えないくらい怖い顔。




.




(なんであんたなの…)





.




恋は人をダメにするなんて言うけれど、
人を好きになるあまり、凶変してしまう時もあるのかもしれない。

こんな時、きっと漫画やドラマだったら
浮所くんが来て”やめろ！”ってなる展開なんだろうけど。
ココは現実世界なのでそんなことは起きない。




.




(なんか言いなさいよ！)




.




私は優実ちゃんの事は知らない。
仲良くもないし、ずっと見てたわけでもない。
でも、浮所くんが本当に大好きなのは伝わる。分かる。




.




.




.

37 hidaka Side→←35

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す