検索窓
今日:605 hit、昨日:1,019 hit、合計:49,944 hit

33 ページ33

.





.




.




「もう……」




.




しっかりしてよ私の身体!
ここで動けなくなったって、
誰も手を貸してくれる人なんていないんだから。
真美ちゃんに連絡しようとスマホを開くと
真美ちゃんより早く出てくる”浮所飛貴”の文字。あの時と同じだ。





.




『はぁ、はぁ、はぁ、……見つけた』




.




バタバタと足音が聞こえて近くで立ち止まったかと思うと
私にかけられた男の声。だけどなんだか心地よい声で。
不思議に思いながらも、恐る恐る顔を上げる。




.




「浮所くん!?」





.




少し大きめの黒いティーシャツに黒いパンツを合わせ
走ってきたのか肩を揺らして立っていた。

アタフタする私とは反対に息を整えた彼は
何も言わず私に近づいてくる。




.





「えっ、ちょっ、………!」




.




近づいてきた彼は私の左手を掴んで自分の方へ手を引く。
反動で前に倒れそうになった私をキャッチするように。
彼の左肩に顔をうずめた。あの時と同じ洋ナシの香り。

って、だ、抱きしめられてる?!?

ちょうど怖かったから、自分は影の人間だと思っていたから。
私が彼を好きだと思うのは対等に扱ってくれたから。
そう、思っていたせいか抱きしめられて少し落ち着く。
私より大きな肩幅に彼が男の子だという事を実感するし
私の頭が彼の肩の位置にあることで彼の背の高さも感じた。




.




『浴衣、めっちゃくっちゃ似合ってる!』




.




私の肩を両手で持ってさっき見たあの笑顔で言う。
想像以上の声の大きさに少し驚いたけど、
それはまったく気にしてないのか笑顔のまま
私をもう一度抱きしめる。




.




「あ、…の?」

『はぁ、もう可愛すぎて誰にも見せたくない』

「う、浮所くん?」

『ねぇ暁』

「ん?」

『俺から、もう逃げないで』




.




その声が耳にかかってくすぐったい。
ほんの少しだけど私を抱きしめる力が強くなった。

いきなりの急展開に、頭が追い付かない。
逃げないでってどういう事?




.




「あ、あのちょっともういいかな?」




.



ずっと抱きしめられてると私の心臓が持ちません…
離すよう促すと”あ、ごめん!”と言って離れてくれた。




.




「探してくれたの?」

『うん、』

「ありがとう」

『どうして逃げたの?』




.




”俺会えてうれしかったのに”と言う彼に
そんな事言われたら勘違いしちゃう。

だけどまさか、その問いに合わせる顔がなかったなんて
言えるはずもなく”フルーツ飴が食べたかったから”と言った。




.




.




.

34 hidaka Side→←32



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (118 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
347人がお気に入り
設定タグ:浮所飛貴 , 那須雄登 , 美少年   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Shiro.(プロフ) - 梨乃さん» 感想ありがとうございます!励みになります、うれしいです!!! (4月10日 11時) (レス) id: 5a97038d8f (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - ものすごくキュンキュンしました!続きが楽しみです^_^ (4月8日 8時) (レス) @page36 id: 5cceb5056f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Shiro. | 作成日時:2024年2月26日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。