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「もう……」
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しっかりしてよ私の身体!
ここで動けなくなったって、
誰も手を貸してくれる人なんていないんだから。
真美ちゃんに連絡しようとスマホを開くと
真美ちゃんより早く出てくる”浮所飛貴”の文字。あの時と同じだ。
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『はぁ、はぁ、はぁ、……見つけた』
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バタバタと足音が聞こえて近くで立ち止まったかと思うと
私にかけられた男の声。だけどなんだか心地よい声で。
不思議に思いながらも、恐る恐る顔を上げる。
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「浮所くん!?」
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少し大きめの黒いティーシャツに黒いパンツを合わせ
走ってきたのか肩を揺らして立っていた。
アタフタする私とは反対に息を整えた彼は
何も言わず私に近づいてくる。
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「えっ、ちょっ、………!」
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近づいてきた彼は私の左手を掴んで自分の方へ手を引く。
反動で前に倒れそうになった私をキャッチするように。
彼の左肩に顔をうずめた。あの時と同じ洋ナシの香り。
って、だ、抱きしめられてる?!?
ちょうど怖かったから、自分は影の人間だと思っていたから。
私が彼を好きだと思うのは対等に扱ってくれたから。
そう、思っていたせいか抱きしめられて少し落ち着く。
私より大きな肩幅に彼が男の子だという事を実感するし
私の頭が彼の肩の位置にあることで彼の背の高さも感じた。
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『浴衣、めっちゃくっちゃ似合ってる!』
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私の肩を両手で持ってさっき見たあの笑顔で言う。
想像以上の声の大きさに少し驚いたけど、
それはまったく気にしてないのか笑顔のまま
私をもう一度抱きしめる。
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「あ、…の?」
『はぁ、もう可愛すぎて誰にも見せたくない』
「う、浮所くん?」
『ねぇ暁』
「ん?」
『俺から、もう逃げないで』
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その声が耳にかかってくすぐったい。
ほんの少しだけど私を抱きしめる力が強くなった。
いきなりの急展開に、頭が追い付かない。
逃げないでってどういう事?
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「あ、あのちょっともういいかな?」
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ずっと抱きしめられてると私の心臓が持ちません…
離すよう促すと”あ、ごめん!”と言って離れてくれた。
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「探してくれたの?」
『うん、』
「ありがとう」
『どうして逃げたの?』
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”俺会えてうれしかったのに”と言う彼に
そんな事言われたら勘違いしちゃう。
だけどまさか、その問いに合わせる顔がなかったなんて
言えるはずもなく”フルーツ飴が食べたかったから”と言った。
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Shiro.(プロフ) - 梨乃さん» 感想ありがとうございます!励みになります、うれしいです!!! (4月10日 11時) (レス) id: 5a97038d8f (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - ものすごくキュンキュンしました!続きが楽しみです^_^ (4月8日 8時) (レス) @page36 id: 5cceb5056f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Shiro. | 作成日時:2024年2月26日 22時