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『暁』
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静かだった店内。店員さんに迷惑のかからないよう、最低限。
あくまでも本探してますよ感を出しながら震える体をごまかす。
そんな時に頭上からした声。
驚いて肩がビクついたのを隠す様に、そのまま立ち上がった。
振り返ると、いつぶりだろうか。久しぶりの浮所くんに少し緊張した。
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『もう、いなくなったよ』
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『帰ろっか』
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あまりにも優しくて。甘くて。とろけて。
こんな優しい顔、誰かに向けられるのは生まれて初めてで。
なんとも言えない感情になってしまって。
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『てか歩ける？』
「ふふ、歩ける」
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でも、その子とは触れないで。
いつもより少し甘いけど、いつも通りの浮所くんに。
彼の優しさを感じて。すこしくすぐったい。
私も、触れられてあの時を思い出すくらいなら
振れないで、気にしないで。彼との続きを過ごしたい。
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だけど、それでも震えてしまう手。
あれ。おかしいなあ。もう浮所くんが来てくれて
大丈夫なはずなのに。なのに、後ろが怖くて。
誰かに付けられてるんじゃないかと思うと、怖くてたまらなかった。
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「あっ、」
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そんな私に気づいたのか、彼は何も言わず私の手を取る。
そのまま私と彼の間に繋がれた。
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「ご、ごめんね」
『ん？』
「あ、誰かと一緒にいたよね？」
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切羽詰まって”助けて”なんて我儘な事言ってしまったけど
電話越しに聞こえた女の子の声を聞き逃さなかった。
私が彼を頼ってしまったから、
渋々ココに来てくれたのかと思うと申し訳なく思う。
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『俺は今、暁と一緒にいれて嬉しいよ』
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”ごめんねじゃなくてありがとうが聞きたい”
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私にこんな出来事が起こっていいのだろうか。
そう思ってしまうくらい、彼の言葉は私の心にささった。
浮所くんが好き、と思ってしまった反動なのか。
それとも好きって気持ちが増えて幻覚見えてる？
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「あ、りがと」
『んふふ、どういたしまして』
『あ、俺からも。』
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最寄り駅から変える道。
毎日、この道を歩いて。帰って。走って。
いろんな感情を抱えたこの道で、
今、手を繋ぎながら歩いている。
なんだか変な感じがして。
別に目が合ったわけじゃないのに、目を逸らす。
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『俺を頼ってくれてありがとう』
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そして、彼はただ頭が良くて顔が整っているだけじゃなくて。
頼りがいがあって優しくて暖かくて。芯がある人だ。
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Shiro.(プロフ) - 梨乃さん» 感想ありがとうございます！励みになります、うれしいです！！！ (4月10日 11時) (
レス) id: 5a97038d8f (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - ものすごくキュンキュンしました！続きが楽しみです^_^ (4月8日 8時) (レス) @page36 id: 5cceb5056f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Shiro.
| 作成日時：2024年2月26日 22時
