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「ねえ、浮所くんって本当に頭いいのかな」
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昼休み、教室の窓から同級生と戯れる浮所くんを見て
なんとなく思った。
切れ長の目が無くなるくらい、にっこり笑って。
まるでこの世界の黒い部分なんて知らないかのように。
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「なに。浮所くんに興味持ち始めた?」
「えっ、……あーいや、別に」
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家庭教師になったって話を真美ちゃんにしようか迷う。
高校生にもなって家庭教師という事が恥ずかしいのか
それとも浮所くんだからなのか。私の気持ちは、
きっと前者であるだろう。そう思いたい。いや、そうだ。
”んー、頭いいんじゃない〜?”
きっと適当なんだろう、
特に考えて無さそうな真美ちゃんの返事を聞きながら
私も、ただ聞いただけ感を出しながら言う。
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「そういえば、ブレザー返せた?」
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真美ちゃんのその言葉に心臓が跳ねる。
浮所くんが家に来たあの後、
その日の数学の小テストだけ渡して
私の家を後にした。
これからどのような頻度で家庭教師をするのか。
そもそも本当に家庭教師とやらをするのか。
なにもわからないまま。
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「返しに行く時に美少女に声かけられて渡してもらった」
「美少女?」
「うん、めちゃくちゃ可愛くて髪の毛が綺麗でふわふわしてた」
「あ、もしかして優実ちゃんかな」
「優実ちゃん?」
「確か浮所くんと同じクラスだった気がする」
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そう言うと真美ちゃんは何かを考えた後
にやにや笑っていた。
そして私に”気を付けてね”と言った。
なんだか意味深な言葉に嫌な予感がした。
いっそ今真美ちゃんに浮所くんとの出来事を話してしまえば
私じゃ思いつかないような、いい案を上げてくれるかな。
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「真美ちゃん、あのね……」
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「えー!!!!家庭きょっ、、、!?!?」
「しぃ〜〜〜〜〜」
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言ってしまった。
そして思った以上の真美ちゃんのリアクションに
クラスの子の視線が向けられる。
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「なんで!?確かにAは勉強、壊滅的だけど」
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一言多い……なんて突っ込むのをやめるくらい
私の勉強が壊滅的だと純粋に思っている顔をしていた。
まもなく次の授業が始まる。
偏差値はそこそこの高校で、限られた人数の教室で
彼氏できたーとか好きな人とすれ違ったーとか目が合ったとか。
他愛もないかもしれないけどきっと私たちは今を全力で生きている。
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Shiro.(プロフ) - 梨乃さん» 感想ありがとうございます!励みになります、うれしいです!!! (4月10日 11時) (レス) id: 5a97038d8f (このIDを非表示/違反報告)
梨乃(プロフ) - ものすごくキュンキュンしました!続きが楽しみです^_^ (4月8日 8時) (レス) @page36 id: 5cceb5056f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Shiro. | 作成日時:2024年2月26日 22時