5 入水 前。 ページ22
…とある町を駆け抜ける男がいた。
何かを探し、目を細め、地に足を運ぶ。
たまに足を止めたかと思うと、近くを通る学生や、住民に声をかけ、赤髪の派手な男を知らないか、と問いかけ、知らないとなると、その場からすぐに離れる、をずっと繰り返していた。
…見慣れない顔だな。声をかけられた学生や、住民は殆どそう思い、大柄なその男を、必ず一度は訝しんだ目で見るのだった。
しかし、そんなことが続いたからこそなのか、その男には先程の学生が異常なぐらいに印象に残っていた。
二人の男子高校生。印象に残った理由は、その鮮やかな緑と紫色の真っ直ぐな瞳のせいではない。
と言うか男の周りには金髪やら赤の瞳やらを、生前からの仲間がわんさか今世では持っているのだ。もう紫色にさえ慣れてしまっていた。
…流石に狸には驚いていた。
まず、この辺りで見かけない大柄な男が、「派手な赤髪の男を知らないか？」と声をかけてくるものだから、怪しまれることは仕方ないとは男も思っていた。
が、しかし、声をかけた途端、この世の終わりが来たみたいな顔をして驚くわ、男の視線も気にせずに腹を抱えて笑い飛ばすわで、少し自分の方が馬鹿にされているのではないかと、勝手に思ってしまったぐらい、男には滑稽だった。
周りには自己中心的な行為にしか見えない二人の行動を、男は密かに笑っていたのだった。
とは言え、得られた情報は無し。
何故かは知らんが、狸を連れてきている方の奴が少し考え込んでいたのも気になるが、ま、関係ないだろ。学生で太宰と関係のある奴の方がおかしいからな。
「また手当り次第探すかねぇ…」
男は少し思考を巡らせ、腕を組む。
手当り次第。手当り次第と今言ったが、この男にはほぼ手当たりはないのだ。
もう十分と言っていいぐらいこの町や周辺は探した。
男自身でさえ呆れるぐらい聞き込みもした。それでも見つからない。
見つからなかったら見つからなかったで、どっかで死んでいる可能性だってあるのだ。
「……」
男はそう思うと、何も考えずに足を動かし始めた。
「安吾ぉぉおおおおおお！！！！」
この声が聞こえたのも、丁度その時だった。
「……は？」
安吾。そう呼ばれた男は、今の彼らしくない間抜けな声を出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 36人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
筆ペン屋さん 極細(プロフ) - 柑橘みかん@crewさん» こちらこそすみませんでした…素敵なお誘いありがとうございました！ (2020年11月9日 23時) (
レス) id: d5543b7af3 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘みかん@crew(プロフ) - 筆ペン屋さん 極細さん» いえいえ！！こちらこそ、無理なお誘いしてすみません(汗) 本当、定期的にコメントしにきます((((( (2020年11月9日 23時) (レス) id: 0a393c33d8 (このIDを非表示/違反報告)
筆ペン屋さん 極細(プロフ) - 柑橘みかん@crewさん» ごめんなさい！本当に申し訳ないんですけど、私、占ツクで作品を見たり、書いたりすることしかやってないので、出来ないです……誘ってくださったのにすみません… (2020年11月9日 23時) (レス) id: d5543b7af3 (このIDを非表示/違反報告)
柑橘みかん@crew(プロフ) - 筆ペン屋さん 極細さん» あの！よろしければ…ボードとかでお話しできないですかね(((((こrrrr (2020年11月9日 23時) (レス) id: 0a393c33d8 (このIDを非表示/違反報告)
筆ペン屋さん 極細(プロフ) - 柑橘みかん@crewさん» 私も嬉しいです！ダメです逝かないでください((( (2020年11月9日 23時) (レス) id: d5543b7af3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：筆ペン屋さん 極細 | 作成日時：2020年7月27日 0時
