タオル越しのやさしさ【ウィリアム・ヴァンジャンス】 (ページ2)

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ワタワタしながらも跪こうとする私を制して、彼は私の頭になにかをかけた。ふんわりとしたなにか。香る、甘い柔軟剤。それがタオルだとわかった頃には、私の頭はわしゃわしゃとかき回されていた。

「ダメだよ、女性が身体を冷やしては」

　幼子を諭すような、優しい口調で、団長は私の頭を拭いた。こんなこと、あってはいけない。いけません団長、と申し出ても、彼はいいんだと言うばかり。「だって、誰も見ていないからね」

「申し訳ございません……」
「本当にいいんだよ。キミが病に伏せる方が問題だ」

　決して痛くない、けれどしっかりと拭かれている感覚。そのちょうど良い具合がすごく気持ちよくて、私は懐柔された子猫のように、おとなしく彼になされるがままになるのを選んだ。雷への恐怖も、このついていない散々な気持ちも、傘を忘れた自責の念も、拭ってくれるような気がしたから。

「さあ、そろそろいいかな」
「あっ……」

　ふっ、と頭にかかった重みが消えた。それに対して私がどんな表情をしていたのかはわからないけれど、団長は私の顔を見て小さく笑う。
　羞恥心。顔が火照っていくのを感じる。しまった、と視界が泳ぐ。団長の笑みが深くなっていくに連れて、私の体温は上がっていく。
　どうしようもなくなってタオルで顔をかくすと、また頭にあの重み。

「また雨に濡れたらおいで」

　雷がゴロゴロと鳴った。雨がバチバチと屋根を叩きつけた。でも私の耳には、遠ざかっていく団長の足音しか届いていなかった。