タオル越しのやさしさ【ウィリアム・ヴァンジャンス】 (ページ1)

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ピカッと、視界が真っ白に包まれた。

「ひっ！？」

　これから来るであろう轟音に備えて耳を塞ぐ。視界からの攻撃はとっくに受けたはずなのに、ぎゅっと目も瞑ってしまうのはなぜなのだろう。その疑問は、世界を裂くような雷に撃たれて、意識の底に落ちていった。
　ドラゴンのうなり声のような雷鳴が遠のいたのを確認して、手を離す。スピーカーのつまみをゆっくりと回すように、雨音が鼓膜に帰ってくる。雷様の偉大さを誇るように、木々の葉がパチパチと拍手した。

「ああもう……」

　なぜ私は傘を忘れてしまったのだろう。エリート魔法騎士集団、金色の夜明けに入団してしばらく経ったが、私のこのマヌケさはなかなか治らない。叩きつけるような雨に頭や肩を殴られながら、私は本拠地までの道を走っていた。
　靴下に泥を跳ね上げて、私は走る。やっとの思いで本拠地の門をくぐると、私はすぐさま屋根の下へ向かった。
　たっぷりの水を吸った衣服が、ぴったりと肌にくっついて気持ち悪い。シワになるのは嫌だけれど、廊下を濡らすのは良くないなら絞っておこう……とローブの裾に手を伸ばしたその時、背後から声がした。

「やあ」
「仕事終わりかい？お疲れさま」
「えっ、あっ、だ、団長！？」

　気品あふれる笑みを浮かべたヴァンジャンス団長が、そこに立っていた。派手な仮面の奥の瞳が、猫のように細められている。情報としてはそれだけなのに、この神々しさはなんなのだろう。これが、カリスマというものだろうか。