Ep.65 「きっとこの手を離さないで」 ページ22
知らない天井である。
あーうん?家の寝室の天井でもなければ高専の医務室の天井でもない。白い。
………あ、病院。
私、生きてたのか。
記憶が混濁して、よく覚えていない。
師弟コンビの呪霊がえらく面倒で、久しぶりに腹部に強烈な一撃を食らった。あざができているいらない確信がある。
結構出血がひどくて……意識ギリギリのところで祓ったんだったか。その後から記憶がない。まぁ生きているから良いでしょう。
重いし痛すぎるのだが、ナースコールが押せないので、体を無理矢理起こす。どうやら酸素マスクに点滴等々色んなものに繋がれているらしい。
起き上がったのはいいんだが、体痛くて捻れない。どうしよう。
と、考えていると、ガラガラと病室の扉が開く音がして。
「………A」
「……陣平くん?」
グラサンのせいで表情がよくわからない彼が、病室のベットの前で立ち尽くしていた。そうだ、彼を置いて私は呪霊を祓いに走ったのだ。ちょっと待ってまさか血塗れの私の第一発見者って陣平くん……?
「あー……えーっと……その」
呪霊のこと、さてはて何と説明しよう。
「あの……あのね」
「オイ」
「は、はい」
静かなる迫力。無表情なのが余計に怖い。
自然と背筋を伸びてゆく。
「危ねぇだろうが!追うなっつったろ!!重症負いやがって!!!」
「本当すみませんでした!!!」
こっわ!!
私一応入院患者!!
久しぶりに、本気で怒っているところを見た。
いや、確かに静止を振り切って見たことない化け物を追っていった幼馴染みが血塗れで見つかったらそりゃ怒るのはわかるけど!
でも私だって仕事だし!!
陣平くんも危なかったし!!
情状酌量の余地があるよね!?
さぁ何でも言ってこい私にだって言い分がある!!
……と、我ながら最低なことを考えていると、室内に沈黙が降りる。
「………?陣ぺ……」
「お前、死ぬかと思った」
陣平くんが近づいてきて、私を抱きしめた。さっきの言葉とは裏腹に、抱きしめる力は体を労るように優しい。
……ごめん、とは言えなかった。
私はあの行動が最善だったと思っているし、あの場で呪霊を見逃すことは、私の呪術師になった動機、というか呪術師としての個人的なポリシーのようなものに反するのだ。
2503人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やなり(プロフ) - トマトまとさん» 温かいお言葉をありがとうございます!(T-T) 拙作を好きだと言っていただけて本当にうれしいですし、トマトまと様をときめかせることができたようで良かったです(*^ω^*) こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年12月13日 14時) (レス) @page28 id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!最終話を読んで、裏設定を読んで、更にこの作品が好きになりました。愛っていいなぁと思うお話で、キュンキュンしながら読ませていただきました。素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました! (2022年12月11日 13時) (レス) id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - 愛実さん» お待たせしました!!最終話を更新いたしました。楽しんでいただけたらうれしいですm(_ _)m (2022年12月11日 11時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - そらさん» ありがとうございます!大変遅らせながら、最終話を更新しました。楽しんでいただけたらうれしいです(*´꒳`*) (2022年12月11日 11時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
愛実 - めちゃ続き気になる…、!!!更新待ってます!!無理しない程度で頑張ってくださいッ! (2022年10月6日 18時) (レス) @page23 id: e769ed5532 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:やなり | 作成日時:2022年8月4日 14時