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「俺は錆兎。先の助太刀、感謝します。おかげであの鬼を倒すことができた」
「俺は冨岡義勇。ありがとうございました」
鬼が灰になって完全に消えたのを見届け、怪我の手当ても終えた私たち三人は歩きながら言葉をかわす。
「私はAと言います。助けられて良かったです。…あと、みんな敬語を外しません?なんだかむず痒いので」
「ああ、わかった」
「(コクリ)」
二人は私の提案にすぐに頷いてくれた。
もう鬼はほとんどいないらしく、出てきたとしてもすぐに狩ったため、少し余裕のできた私たちの会話は流れるように続いていった。
「へえ、二人の狐面は師範の鱗滝さんっていう人が作ったものなんだ」
私は始めから気になっていた独特な模様の描かれた狐面について聞いた。
「これは厄除の面と言う。鱗滝さんが俺たちが生き残れるようにまじないをかけてくれたものなんだ」
「…鱗滝さんは厳しいけど、本当に優しい人だ」
錆兎と義勇が嬉しそうに狐面を見ながら話す様子から鱗滝さんが大好きなことを察した。
それから話の流れで鱗滝さんについての話題となり、鱗滝さんがどんな鍛練をするかの話になった。
「鱗滝さんの鍛練で一番きついと思ったのは…やっぱり山下りだな。あれが一番キツかった」
「…山に罠があるから危ないんだ」
「俺たちの成長に合わせて罠の危険度も上がるから怪我が絶えなかった」
山下りの罠の細かい内容は、小刀が頭めがけて飛んでくるとか、落とし穴の下に鈍い銀色が光ってるとか、そんな感じのことだった。
「…そんな危ないことさせられてたんだ」
思わずそう言った私は悪くない。
誰だってそう言うと思う。
ちなみに私の稽古は基本的に師範への打ち込みだった。
私は一応鬼と言うくくりに入るから、正直な話筋力を鍛えたり、走り込むことでの体力向上は必要ない。
その代わり私は師範への打ち込みをずっとやっていた。
あの師範、片足が義足だし、もうそれなりの年だから持久戦で勝てるかもしれないと一瞬思うんだけど、嘘だろうと思うくらい強くてしぶとい。
瞬く間にいつもボコボコにされた。
何回も木刀が身体に当たって本当に痛かった。
すぐ治るけど痛いものは痛かったんだ。
そんな師範の稽古も辛かったが、まだましなほうだなと思う日が来るとは予期していなかった。
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作者名:そらしろ | 作成日時:2020年12月31日 15時