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私はお礼を言い自力で立とうとしたが、何故か身体に上手く力が入らず地面に座り込んでしまった。
今までこんなこと一度も無かったのに。
なかなか自力で立つことができず困惑している私を見て錆兎は言った。
「だから無茶するなと言っただろ」
そう言うなり錆兎は私に背を向けてしゃがみ、乗れとだけ言った。
目の前に広がる錆兎の背中は早く乗るよう私を急かしているようだった。
なるべく錆兎には迷惑をかけたくないため、私は自分で本当に立てないのかもう一度足に力を入れてみる。
しかし、立つことはできなかった。
私は自分で歩くことを諦めて大人しく錆兎の背中に乗ることにした。
私が乗ったことを確認すると錆兎は自然に立ち上がりゆっくりと歩き出した。
「ごめん。重いよね」
一人の人でもそれなりに重いのに、ましてや鬼の私は筋肉量が多いせいでなおさら重いことだろう。
「これも鍛練だと思えば何てことはない。実際そこまで重くないしな」
しかし、錆兎にかかれば重くないらしい。
嘘なのか本当なのかわからないがこの話を深く掘っても意味はないだろう。
私はそうかと相づちを打って今力が入らない原因を自嘲気味に語った。
「今日はおそらくだけど一刻より長く日に当たってしまった。そのせいで本来なら灰になる身体をそうならないように活動を停止させて、余った力を身体の回復に使っているんだと思う。…もっと時間配分を考えておけば良かった」
「実際、本部に向かっている途中で日に当たれる時間を越していたんじゃないか?何か対策をしておけばよかっただろうに」
「そうかもしれないけど、あの時日の下に出ていなかったら、鬼の私は蟲柱さんに信じてもらえず、仔細報告より前に他の柱に報告されてお館様に会わないまま首を斬られてたかもしれないでしょ」
「例えそうであっても、もっと自分を大切にしろ。鬼だから自分は大丈夫だと考えるのはやめてくれ」
それは無理。
鬼になったことで力は得られたが、信用はないだろう。
人々は鬼に人生を奪われ、破壊され、塗りつぶされた。
そのため人は鬼を信用しない。
だから、私は自分で味方であることを証明しなければならない。
そうしなければ、守りたいものも守れない。
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作者名:そらしろ | 作成日時:2020年12月31日 15時