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「俺はAの刀を打った鋼鐵塚という者だ」
「ご足労いただきありがとうございます。中へどうぞ」
私は手を家に向け、鋼鐵塚さんを家の中に入るように促した。
「これが日輪刀だ」
しかし鋼鐵塚さんは私が中に入るよう勧めたのにも関わらず、その場に座り込み日輪刀の説明を始めた。
わざわざ来てくれた人を外に座らせておくわけにはいかないと思った私はその後も辛抱強く鋼鐵塚さんを説得するが、鋼鐵塚さんは全く聞く耳を持たない。
とうとう私はどうせ家の中に入らないからと開き直って彼の説明を聞き始めた。
そうするとどうだろう。
気付けば、日輪刀についての話が興味深く面白かったために私も途中から一緒に座って聞いてしまっていた。
そしてなかなか部屋に戻らない私を見に来た師範に二人まとめて怒られたのは内緒の話である。
「これがあんたの日輪刀だ。さあさあ抜いてみな」
私に日輪刀を差し出した後、手をくねくねさせて鋼鐵塚さんは期待を募らせている。
私は受け取った刀を見た。
これが、私の刀。
私は鞘から刀を抜く。すると根元のほうから色が変わりだした。
「…これは…藤色?」
私の日輪刀は深い藤色に変わり、そこに黄色に輝く稲妻が走っていた。
「そうそう、俺はこういうのが見たかったんだ!」
鋼鐵塚さんはさすが俺の刀だと大騒ぎし、師範は雷一門らしい稲妻のある刀を嬉しそうに眺めていた。
鋼鐵塚さんが帰った後、私は師範に呼ばれて師範の部屋に来ていた。
「A、お前さんに渡したいものがあるんじゃ」
そう言って師範は両手で包みを差し出した。
私は包みを受け取りその場で開けてみる。
「…羽織?」
出てきたのは一枚の羽織で、それの襟元は白く、裾に行くに連れて藤色となったものだった。
また羽織の裏地は師範と同じ亀甲模様があった。
「お前さんへの餞別じゃ」
師範は私に優しく微笑んだ。
「これから先、最終選別の時とは比べ物にならんくらい強い鬼に会うじゃろう。だがな、決して諦めてはならん。必ず道はある。それを信じて前に進むんじゃ。お前さんならできる」
師範の温かい言葉に思わず私の目から出た涙が畳に滲む。
「……ありがとう、ございます」
私は感謝が伝わるよう、精一杯深く深く頭を下げた。
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作者名:そらしろ | 作成日時:2020年12月31日 15時