母親 ページ40
＊
Aは中流階級の家の一人息子だった。
「いいこと？A。ロディ・ソウルと友達になりなさい」
スクールに入学する前、かのソウル家の長男が同級生だと知ったAの母親はAにそう命じた。母親は下層に落ちることを何よりも心配していたのだ。
家庭教師も友人関係も、すべて母親の言いなりになっていたAはいつものように頷いた。だってそれが当たり前だったから。
ロディとAの関係は仕組まれたものだった。入学初日の自己紹介でAはロディの顔を覚える。次の日、たまたまバス停でロディを見かけたAは「おはよう、ロディ」とまるで旧知の仲のように話しかけた。
ロディがAの名前と顔を覚えていてくれたことに、Aは後ろめたさと確かな嬉しさを感じていた。
母親の計算外だったのは、ロディとAが想像以上に相性ピッタリだったことだ。これで将来は安定だとAの母親は胸を撫で下ろす。家族ぐるみでの付き合いも始まっていた。
しかし、ソウル家の末子が生まれると共に母親が亡くなり、青空は薄暗い雲に隠され始める。
「あのね、最近ロディが学校に来れてないんだ」
自分のことのように顔を歪めて相談を持ちかけてきた息子に、母親は昼の間だけ家で預かることを決めた。Aの言葉に動かされたわけではない。エディ・ソウルに恩を売ろうと考えての行動だった。
万が一ソウル家が没落したとしても、手に職がついているエディ・ソウルならば立て直せると信じていたからだ。
だが悪いことは続いた。ララが二足歩行を習得した頃、何も言わずにエディ・ソウルは姿を消した。それも、危険な思想団体の団員であるという最悪な情報を残して。母親は血の気の引いた顔でAに命じる。
「ソウル家に関わることを禁じます」
「どうして？ロディは何も悪いことをしてないよ」
何も聞かずただ己の言うことを聞いていた息子の疑問に、母親は嫌な予感がしていた。
「あなたはこどもだから分からないでしょう。だから代わりにおとなである私が判断しているのよ」
「ヒューマライズが良くないのは知ってる。でもロディたちは関係ないでしょ？」
Aの幼く純粋な疑問に、母親の頭の中はぐちゃぐちゃになった。どうして言うことを聞けないの。私はAのことを思って言っているのに。
無知は罪ではないけれど。
「だから！あなたはこどもなの！」
大切なものを守るための方法は、Aには合わなかった。
ただそれだけの話だ。
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緑猫(プロフ) - ねこさん» こちらこそ、読んでいただきありがとうございました！ (2021年9月28日 22時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございました (2021年9月28日 15時) (レス) id: 0e99721aee (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - nanoka(*´∀｀)さん» コメントありがとうございます！リクエストもありがとうございました！いつでもいらしてください！ (2021年9月7日 10時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
nanoka(*´∀｀)(プロフ) - まず、完結おめでとうございます！ついつい何度も読み返しちゃいます。リクエストのもありがとうございます！お疲れ様でした！！ (2021年9月7日 0時) (レス) id: 36fe9cda9a (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - 枝豆オタクさん» コメントありがとうございます！とっても嬉しいお言葉です…！ぜひ、またいらしてください。 (2021年9月6日 19時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年8月24日 18時
