轟とシンガー2(リクエスト) ページ31
＊
「すごい」
動画が終わり、少しの沈黙のあと。余韻に浸るAは轟と同じ感想を述べた。そのことに気づいた轟は、なんとなくおかしく思う。
「ねえ、この動画貰えない？」
「そんなに気に入ったのか？」
「うん。めっちゃ好きだわ」
Aの指導で、轟はWiFiと近距離無線通信を使用し動画を送る。ちなみにこの動画は担任の相澤によるチェックが入っているので、雄英で保護している少女が映っている心配はない。
動画を受け取ったAはさっそく繰り返し見始めた。気になるところがあれば止めて観察し、コマ送りを駆使する。
何をしているのかと轟が訊ねるとAは「ショートを探してる」と答えた。
「俺は演出隊だったからメインには映ってねえぞ」
「こんなイケメンなのに？」
「それは関係ないんじゃねえか？」
「おれなら……ああいや、でも妥協なさそうだし目的によりそうだね」
轟は伏せたが、この出し物には2つの隠し要素があった。1つは他クラスへの提供、もうひとつはエリという少女の笑顔のためだ。
話す必要がないだろうと轟は敢えて言わなかったのだが、Aにはただ盛り上がればいいだけではないことを察されていた。
ふとデクから聞いたエリのことを思い出した轟は、先程中庭でこどもからおとなまでも笑顔にさせたAの音楽を、エリにも聴かせてやるのはどうだろうかと考えた。
「Aの動画はないのか？」
「おれは持ってない。ファンがSNSにあげてるから見たかったらそっちで見て」
SNSをやっていない轟は口を噤んだ。仕方ない。確か緑谷がアカウントを持っていたはずなので頼もう。
不自然に黙り込んだ轟に、Aは画面から顔を上げた。
「やってないの？」
「必要なかったからな」
「始めるなら教えるよ」
不思議な体験だったと轟は思う。異国で大怪我を負い、その入院先で同い年のシンガーからSNSの指南をされたのだ。
寮生活であることを聞いていたAは、身の回りやクラスメイトの顔をアップするのであれば非公開にしたほうがいいと助言さえした。それからAの音楽アカウントと私用アカウント(あまり動いていないが他言無用の存在だ)の両方をフォローした轟は、Aから教えてもらってデクをフォローする。
轟のおぼつかない操作を見て、Aはこっそり笑った。ヒーローに良い印象のなかったAは、これから等身大のヒーローを自身の目で確かめていく。
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緑猫(プロフ) - ねこさん» こちらこそ、読んでいただきありがとうございました！ (2021年9月28日 22時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございました (2021年9月28日 15時) (レス) id: 0e99721aee (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - nanoka(*´∀｀)さん» コメントありがとうございます！リクエストもありがとうございました！いつでもいらしてください！ (2021年9月7日 10時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
nanoka(*´∀｀)(プロフ) - まず、完結おめでとうございます！ついつい何度も読み返しちゃいます。リクエストのもありがとうございます！お疲れ様でした！！ (2021年9月7日 0時) (レス) id: 36fe9cda9a (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - 枝豆オタクさん» コメントありがとうございます！とっても嬉しいお言葉です…！ぜひ、またいらしてください。 (2021年9月6日 19時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年8月24日 18時
