4話 ページ4
＊
「よぉ親友」
「バッカなんで来たんだ！」
ギッと睨むロディをAは躱し、主の肩にとまるピノにキスを送った。ピノは破顔してAに全身で抱き着く。
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら半身に頬擦りする親友に、ロディは「ぐうぅ」と唸った。どれだけ隠しても"個性"のおかげでロディの感情は筒抜けだ。
ソウル家に末子が生まれて数年が経った。
片親ながらも幸せに暮らしていたロディたちは、他の何者でもない、実の父親によってドン底に落ちた。当人たちは言うまでもなく、AもAの母親にもその理由は分からない。
顔面蒼白になる己の母親をAは冷めた目で見つめていた。
ロディたちの父親、エディ・ソウルが『ヒューマライズ』の団員であることは瞬く間にスクール中に知れ渡った。『個性終末論』を信じ、"個性"持ちを病気だと主張する団体だ。
生徒だけでなく先生までもがロディを避けた。タイミング悪く件の団体が事件を起こしていたこともあり、人から人へ伝言ゲームのようにエディ・ソウルの話はスクール外に流れる。ソウル家の美しかった家は心無い落書きに呑まれ、咲き乱れる花々は手入れする人間を失い枯れ果てた。
理不尽な仕打ちと裏切りに怯えるこどもたちは、とうとうその家までも奪われた。賑やかな市内から更地のスラム街へ生活は一変する。スラム街にもエディのことは及んでおり、幼い弟妹を養うためのマトモな職にロディは就くことができなかった。
しかし、不幸中の幸いと言えばいいのか、ロディの親友であるAは決してソウル家を否定しなかった。それどころか全面的にロディたちを支えてくれている。
すべてに裏切られ、行き場のない怒りを弟妹にぶつけることもできなかったロディの唯一の救いだった。
スクールで先生やクラスメイトから、どれだけ離れろと言われてもAはロディの隣を動かない。
遊び相手のいなくなったロロとララにAはめいっぱいの愛情を注いだ。ヒステリックに叫ぶ自身の母親を振り切り、毎日Aはスクール帰りにスラム街を訪れた。親友に「スクールを辞めるな」というのはロディにできる最後の防衛だった。
この頃になって、ようやくロディはAが仲良くしてくれる理由気づいた。Aもロディが気づいたことを察した。だけど、2人とも何も言わなかった。何も言わない代わりに前を向いて生きることを決めた。
きっかけや過程がどうであれ、今の2人は親友なのだ。
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緑猫(プロフ) - ねこさん» こちらこそ、読んでいただきありがとうございました！ (2021年9月28日 22時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
ねこ(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございました (2021年9月28日 15時) (レス) id: 0e99721aee (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - nanoka(*´∀｀)さん» コメントありがとうございます！リクエストもありがとうございました！いつでもいらしてください！ (2021年9月7日 10時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
nanoka(*´∀｀)(プロフ) - まず、完結おめでとうございます！ついつい何度も読み返しちゃいます。リクエストのもありがとうございます！お疲れ様でした！！ (2021年9月7日 0時) (レス) id: 36fe9cda9a (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - 枝豆オタクさん» コメントありがとうございます！とっても嬉しいお言葉です…！ぜひ、またいらしてください。 (2021年9月6日 19時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年8月24日 18時
