スメールのにわかモブ (ページ8)

今日:17 hit、昨日:3 hit、合計:6,363 hit

8 ページ8

寝起きは最悪でヨボヨボと支度をしていたら仕事に遅刻しかけてしまった。
中高生の頃は自分は夜型の人間だと思っていた、だから朝が弱いし夜は元気なのだと。しかし大人になってみて気づいた、一件夜型に見えていた習性のほとんどは日頃の不摂生ゆえだったと。夜更かしを繰り返すから朝が起きれず、二度寝三度寝を繰り返すから寝起きが悪い。そして社会風刺改めブルーライトを浴びた体は寝つきがとてつもなく悪い。
しかし長年の悪習は数年程度で治る訳もなく、今も尚負債を支払っている。

A「そして不健康な20代に寝不足はキツすぎるってこと……」

日頃の仕事量を正確に覚えている訳では無いが、予想3分の1程度しかこなせていない気がする。目眩や吐き気はなく、業務自体に支障はきたさないが、同僚にコイツ今日動き悪いなって思われているんだろうなと罪悪感と羞恥心で気が滅入る。

ぬるくなったコーヒーに口をつけ、入れ直そうかと考えたが、もうすぐ就業時間だからとみみっちく残ったコーヒーをすすっていた。土日が挟まることのない平日のど真ん中のため、駆け込みの持ち込みはそうそうないだろうと完全に気を抜いていた。

セノ「これを送りたい」

帰ったらまずはベッドに直行しようと、うとうと考えていた頭は突如雷に打たれたように躍動し、半分閉じた目は眼球がこぼれそうなチワワのように人力の限界まで見開いた。

この人配達業者に足を運ぶことあるんだ…と内心物珍しく思いながらマニュアル通り対応する。確認作業中にふと、字体に目がいった。

スメールのキャラクターは公務員だったり自営業だったりで書類を書きそうな描写は何度も出てきた、それこそ教令院という大きな学院があるからには紙とペンに親しくないわけがない。しかし、それら場面で彼らの直筆であろう書面を見れる機会は少ない。そして今、この場面は数少ない貴重な瞬間であった。

A(へぇ…こういう字を書くんだ…)

セノ「どこか不備があったか」

ジロジロと書面を覗いていたら不審がられてしまった。指摘されてしまったことであたふたしてしまい汗で手が湿る感覚がした。

A「いえ、綺麗な字だなと思いまして…」

セノ「そうか？知人からは読みにくいと言われた」

確かにこれはお世辞だった。これ以上怪しまれないよう笑ってお茶を濁し、指定の手続きをしてもらい早々にお帰り願った。

割と字フェチな私は、本日の濃厚な供給と、重圧な出会いの寒暖差に、就業の鐘と共に体が重くなった。