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どう呼べばいいのか。
これ以上何を言っていいのか。
彼はアランじゃない。
探していたアランじゃなかった。
それでも、
どうしてなのか分からない。
再びアランを探さなきゃいけない現実よりも、
亜嵐くんが私の目の前から消えてしまうことが、
ずっとずっと胸が痛くなるのは。
「亜嵐くっ……」
扉に手を伸ばした亜嵐くんへ
無意識にかけた声を止めたのは
振り返ったその笑顔だった。
亜「本当のアランが見つかるといいな」
静けさに包まれた第三校舎の廊下。
そこはまるで
亜嵐くんそのもののように、
誰も寄せ付けない壁があるように思えた。
ねぇ、あなたはあの時のアランじゃないの……?
本当に違うの?
『もう会うこともないだろうし』
そうはっきり告げられたことが、
ショックで仕方なかった。
自分が『アラン』であることを
否定した亜嵐くんは
教室の中へと去っていく。
あんなにも声が似ているのに、
亜嵐くんは
私のことを知らない。
……知らないって言った。
なのに、なんでだろう……。
あの時のアランの声が、
何度も頭の中で蘇って、
亜嵐くんの声と重なってしまう。
「帰ろう……」
後ろ髪を引かれながらも、
亜嵐くんのいる教室に背を向けた。
ひっそりとした薄暗い廊下。
窓に目をやると、
さっきよりも差し込むオレンジの光が
強くなっている気がした。
アラン。
あなたは、
いったいどこにいるの……?
なぜ会えないの……?
蘇る彼の姿を振り切るように、
早足で昇降口へと向かった。
もう二度と入ることのない第三校舎。
会うことのない『亜嵐くん』。
またアランを探して口止めしなきゃいけないのに。
それよりも、
亜嵐くんに『知らないよ』って
言われたことの方が
辛いなんて……。
すべてを打ち消すように駆け出した瞬間、
?「A」
耳に届いた声に足を止めた。
振り返ると、
そこには龍友くんの姿が。
龍「待てよ、A」
「龍友くん、どうして……」
龍「どうして、じゃないって。勝手にいなくなるなよな」
そうだった。
ここまで案内してくれたのは、
龍友くんだったんだ。
それなのに、
何も言わずに帰ろうとしたなんて。
龍「もしかして人違いだった?」
「……うん、違ってた」
言葉にするのも寂しくなる。
龍「そっか、残念だったな」
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作者名:ゆーか | 作成日時:2018年1月16日 21時