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それは、月曜という1番忙しい朝だった。
「ない……………。」
予備があると思って処分した使い捨て
コンタクトレンズだったのに、
どこを探しても見当たらない。
「どうしよう……」
裸眼だとほとんど視界がボヤけてしまう私は
部屋に立ち尽くしてしまった。
このままだと、毛先の跳ねた髪を
ブローすることさえ困難だ。
「仕方ないな」
この状況をどうにかするには、
机の引き出しの中に閉まっている
メガネをかけるしかない。
「メガネ………か」
中学生の時以来、使っていない
細い黒縁のメガネ。
鏡の前に立ってメガネをかけた自分の姿を
眺めてみた。
あぁ……。なんだか地味っぽく見える。
できれば涼太には見せたくないな……。
母「Aっ、なにしてるの？遅刻するよ」
それでも悩んでいる暇なんてなかった。
一階から私を呼ぶお母さんの声がする。
お父さんと大学生のお姉ちゃんは、
もうとっくに家を出ている時間だ。
「早く行かないとっ」
とりあえず時間に追われていた私は、
そのまま学校へ向かうことにした。
そろそろ校舎脇の花壇のつつじが満開に
なろうとしている季節。
新しく始まった高校生活にも慣れて、
爽やかな春の朝を迎えるはずだった。
『あ、Aだ』
「おはよ……」
高校に入学してから、
初めてメガネ姿で登校した私を
最初に出迎えたのは、
クラスメイトの土橋楓と坂東希ちゃん。
楓「メガネなんて久々だね」
楓は中学の頃から親友だ。
サバサバした性格で、
姉御肌の楓は、私達3人のまとめ役のような存在。
高い位置で束ねた髪を揺らしながら
駆け寄って、私を見るなり
楓「懐かしいな、Aのメガネ姿」
と言って笑っている。
希「初めてAのメガネ姿を見たけど、雰囲気変わるね」
高校で出会って友達になった希ちゃんは、
そう言って可愛らしい笑顔を私へ向けた。
平均的な身長やストレートの髪型は
私に似ているけれど、
色白で整った顔は本当に羨ましいと思う。
落ち着いた性格の希ちゃんは
男子からも女子からも人気があるのに
何故か彼氏はいない。
ふと、希ちゃんか出入り口に近い席を見るや、
かすか眉を寄せて顔をしかめた。
どうしたんだろう……。
その仕草が、私は前々から気になっていた。
だって希ちゃんの目線の先には『彼』がいる。
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作者名：ゆーか
| 作成日時：2018年1月16日 21時
