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手を大きく振り上げる涼太らしい
シルエットが見える。
良かった。なんとか伝わっていたみたい。
だけど、と。急に我に返る。
涼太と一緒に帰るなんて嬉しいけど
どうしたらいいんだろう……。
不意打ちのような出来事を、
ハイテンションな楓……
はひとまず置いておいて、
希ちゃんに報告しようとした、
けれど……。
「希ちゃん」
希「………」
「希ちゃん？」
希「えっ、あ……」
私の声に数秒遅れて、
涼太の席へ向けていた視線を
私へ向けた希ちゃん。
どうしたんだろう……？
希ちゃんがぼんやりしているなんて、
珍しい気がする。
「今日ね、涼太から一緒に帰ろうって、誘われちゃった」
できるだけテンションを上げて報告した。
楓「えっ、ホントに？」
なのに、先に反応したのは、
楓のほうで。
「楓、私は希ちゃんに言ってるんだけど」
楓「なにぃ？私をいつからの親友と思ってんのよっ」
と私の口調を真似てふざけて見せた。
さっきまで雨で憂鬱だったとは思えない会話が
飛び交っている。
あぁ、なんだか平和だな……。
放課後になると、再び落ちてきた雨。
涼「やっぱり、止まないか」
青いビニール傘をさして歩く涼太の隣で
私はピンクの水玉の傘の柄をぎゅっと
強く握りしめていた。
……妙に緊張するな。
そのせいか、水たまりに足を取られてしまった。
「きゃ」
跳ねた泥水で汚れた、茶色のローファー。
涼「大丈夫か、A？」
「あ……大丈夫」
動揺しているのが丸わかりな私に、
涼太は「ははっ」と笑い声を立てる。
……あぁ、大失態だ。
しばらくすると、
私の靴が目に入ったらしい。
涼太が！急に真顔に戻った。
涼「すげぇ汚れてる。女子がその靴じゃダメだろ。……そうだな、予備校まで時間あるし、どこかへ寄って泥綺麗にしようか」
さすが、ふだんから几帳面な涼太だ。
靴を拭かなければ一緒にいたくないのかもしれない。
涼太は、図書館へ立ち寄った。
偶然にも、この間楓と希ちゃんと
一緒に勉強した場所だ。
あの日は、たしか……
『亜嵐くん』と出会った日。
今日までずっと彼を見つけることが出来ずに
いるけれど、ほんとうにどうしよう……。
涼「マジでやばいよな」
「えっ」
「ヤバいって、なにが……」
わたしは靴を綺麗に拭きながら
バクバクする心音を、
必死で抑えた。
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作者名：ゆーか
| 作成日時：2018年1月16日 21時
