SeeYou また君に会いたくて (ページ2)

今日:11 hit、昨日:0 hit、合計:86,425 hit

2 ページ2

あと数ヶ月もすれば、

中学校を卒業して高校生になろうという季節。

「エレベーターは……」

学校帰りの私は病院の隅っこに立っていた。

いつもは酔いそうなそうなくらい人が

溢れるこの場所も、

今日は静かで落ち着いている気がする。

「大雨だからかなぁ」

外は天気予報のとおり、

朝から傘をさすと大きな音を立てて

響くくらいの雨が降っている。

そのうえ台風が来たんじゃないかと思うほどの

風まで吹いていた。

わたしの着ているセーラー服もビショビショだ。

「あぁ、こんなに濡れちゃった」

カバンの中から桜色のハンカチを

取り出して水滴のついた手足を拭いた。

『A』

それが私の名前。

それは大好きなおじいちゃんが

私を初めて見た日。

春の暖かい空気に包まれた中で、

大泣きしていた私を抱いた時に

泣き止んだのを見て。

『どうかこのまま悲しい事で泣くことがないように』

と、祈りを込めてつけてくれた名前だ。

だから私はこの名前が好き。

『春』が好き。

新しい出会いの溢れる季節だから。

暖かい風が背中を押してくれる季節だから。

「あ……」

ちょうどハンカチで濡れた体を

拭き終わった時だった。

制服姿の男の子とすれ違った。

「あの制服は、どこの学校だっけ？」

反射的に振り向いた。

いつもよりフロアに人が少なかったせいなのか。

ここが病院という場所だからなのか。

制服姿だったからか。

分からないけれど、

もしかしたら私と真反対の雰囲気を

その男の子が放っていたかもしれない。

寂しそうな。

ひとりぼっちのような……。

ねぇ、この広い世界で。

君に出会う確率ってどれくらいなんだろうね。

もしかしたら、奇跡のような日々の中で

私達は生きているのかもしれない。

けど、運命の人とは何度でも出会うんだって、

聞いたことがある。

それでも、君と『さよなら』した日。

私は、どんな『涙』を流すのかな？

どんな色の『涙』が頬を伝うのかな？

どんな涙に私は――――。

『さよなら』

好きだから、その言葉が言えなかった。

好きだから、その言葉を君へ言った。

だから。

どうか、これが君の

最後の涙になりますように――――――。