片寄涼太 Stellar…涙 (ページ36)

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「分かった」

そう言って同系色のコットン100%の布を

探し始めたわたしに、

涼太くんが、不満げな声をあげた。

涼「分かってないじゃん！俺はこの光るやつがいいの」

「表だけ、サテンにすればいいでしょ？裏地はコットンにする。だから、両方買う」

涼「おー！！」

わたしがコットンの同色の布を見つけて

上の棚に手を伸ばすと、

背の高い涼太くんが楽々と取り出してくれた。

そして、二つの布の巻ものをひとりで

持ってくれる。

ほら、やっぱり優しい。

こういうさりげない優しさや気遣いをふれると、

胸がじんわり温かくなる。

でも、涼太くんはみんなに優しい人なのもわかってる。

わたしは緩んだ気持ちをあわてて引き締めた。

学校のミシンで刺繍がいれられるので、

ミシン用の刺繍糸も買った。

刺繍はシルバーがいいと涼太くんは

しつこく言ってたけど

グレーはあっても光るシルバーがなくて、

白で代用することを

渋々了解してもらった。

布地を買い終えてひと息つこうと、

モールの中にあるコーヒーショップに入った。

わたしはグレープフルーツジュース、

涼太くんはカフェモカを頼む。

毎日学校で会っているし、

衣装のことでよく話し合ってはいるけど

こうして向かい合って座るのは初めてだった。

わたしは正面から涼太くんを見るのが恥ずかしくて

ストローで氷をいじっていた。

ふと、こんなところをクラスの誰かに

見られたらどうしようと不安になる。

衣装係に夏恋が立候補して以来、

誰もが涼太くんと夏恋はカップル確定と思っている。

もともと涼太くんが夏恋にしょっちゅう

ちょっかいを出していたけれど、

夏恋が自分から衣装係に立候補したことで、

ふたりはお互いに好き同士と印象付られた。

それなのに、わたしが涼太くんとふたりで

お茶なんてして、

へんな誤解をうけたりしないかな。

わたしは突然不安になって、

一気にグレープフルーツジュースを飲んだ。

ずずっと最後まですすった私に気づいて、

涼太くんが不思議そうな顔をした。

涼「なに焦ってんの？」