・ ページ14
…
しばらくすると閑静な住宅街を抜けたあたりで、Aのお母さんが車を止める。
着いたみたいです というAの言葉に頷いて車を降りると、周りの景色がそういう所でなんだか一気に実感した。
Aの苗字と同じ漢字が書かれた前で立ち止まると、Aはしゃがみこんだ。
おれも同じように手を合わせると、Aのお母さんから ありがとうと一言言われた。
『……デビュー決まったよ、父さん』
『たくさんの優しいヒョンたちに囲まれて、たまに過保護なくらいおれのこと心配してくれる運命みたいな同い年もいて、かわいい弟もいる。
想像できないよね、家ではワガママだったおれが兄になるんだよ』
Aはなぜか、お父さんへの言葉を韓国語で話した。
だからその内容が俺にもわかって、俺の視界はもうすでに涙でぼやけてた。
泣きたいのは俺じゃない、Aなのにね。
『俺が韓国行くって決まってから、日本での準備期間はずっと韓国語で会話するようにしてくれたよね。
父さん中国語も教えてくれて、日本語は自分もまだまだなのに少ししか知識ない韓国語を一緒に頑張ってくれてさ、
……おれもうこんなに上手くなったんだよ、』
ああ、だからなんだ。
Aは来た時少しだけだけど日常会話はしっかり聞き取れてた。話すのには苦戦してたけど、全く分からないわけじゃなかった。
それはお父さんも一緒に頑張ってくれた過程があったから。
だから今も韓国語で話してるんだね、
『……聞かせてあげたかったなあっ、』
隣のAをみると、涙が溢れてて。
思えばAの涙は全く見た事がなかった。
強い子だったから どれだけ練習で怒られても 悪口言われても、いつか見返してやるって思うような子。
何度も何度も、Aの精神年齢が上だと勝手に思い込んで Aの心の内に気付けないでいるんだ。
まだ高校生だよ、こんな試練、与えなくてもいいだろ。
誰のせいでもないのに 誰かのせいにしたくなるような、無情さだった。
…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 830人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
せる(プロフ) - 揚羽さん» わああありがとうございます( т-т) 私の好み詰め込んだんですけど揚羽さんにも楽しんで貰えたら嬉しいです> ̫ < (11月23日 18時) (
レス) id: d551e89fe1 (このIDを非表示/違反報告)
せる(プロフ) - お米さん» コメントありがとうございます、すみません>_< ゆっくりと前のお話も改善していくようにします。 (11月23日 18時) (レス) id: d551e89fe1 (このIDを非表示/違反報告)
揚羽(プロフ) - せるさんの作品が大好きで、全て読ませてもらいました！色白猫顔イケメン、分かりすぎて…。私の好みにドンピシャすぎます。 (11月23日 13時) (レス) @page10 id: dc7b6890ce (このIDを非表示/違反報告)
お米(プロフ) - 主人公以外の名前のイニシャル無いと読みづらいので主人公以外はみんなイニシャル付けるか逆にみんな付けないかどとらかにしてほしい...。視点ごとに外されるとわけわからないです……。 (11月14日 21時) (レス) @page10 id: 1a788f23e1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：せる
| 作成日時：2023年4月24日 19時
